疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第204話 だから、負けない

 今日もNamed Monsterの練習に付き合わせてもらった。

 セトリを変更し、一曲増えたことで三人はより一層練習に熱を入れていた。

 対バンに確実に勝つための布石を打つため、俺もAMUREの意図は汲み取って行動している。

 

「……カナタ君。未来の私が追加したこの曲を入れた理由ってわかりますか?」

 

 練習後、アミが小声で俺に確認してくる。

 

「一つは俺たち世代の曲だからってとこだろうな。まあ、初代の曲だから俺たちより先輩の方が刺さると思うけど」

 

 未来でも無限にカバーされている曲だから、純粋に曲のパワーもあるだろう。

 

「曲自体はカッコいいと思うんですけど、これって男の子ばっかりに刺さる感じになりませんか?」

「そうでもないぞ。あのコンテンツ、意外と女性ファン多いからな」

 

 ちなみに、AMUREは配信で同時視聴後にドはまりしていた。

 

「それにラスサビ前のギターソロはバカカッコいいからな。そこで客を煽ることもできるし、盛り上げるにはいい選択肢だと思う」

 

 そもそも、あのコンテンツの曲はどれも名曲だからな。

 

「なるほど……メジャーデビューしてるだけはありますね、未来の私」

 

 アミはふむふむと神妙な顔で頷いていた。

 というか、何でもこの子はナチュラルに未来の自分という超常の存在を受け入れているのだろうか。

 

「よく未来の自分とか信じられるよな」

「だって、信じたほうが面白いじゃないですか」

 

 ニカッと笑ってそう答えたアミの笑顔がAMUREの笑顔とダブって見えた。

 やっぱり、元は同一の存在なんだよな……。

 

「カナタン、カナタン! このままで本当に大丈夫ね?」

「というか、一曲増やすのだって許可がいるんじゃ……」

 

 俺とアミが話し込んでいると、喜屋武と桃太郎が不安そうな表情で尋ねてくる。

 

「安心しろ。Named Monsterはの出番はトリだ。盛り上がった状態のアンコールって形で捻じ込む」

「それって盛り上がらなかったら最後の曲ができないってことじゃ……」

「その辺は抜かりない。盛り上がらないことはまずないし、保険として手を回してある」

 

 音楽ライブはアンコール前提でセトリを組むことが多い。

 ただし、この文化祭においてはそういったものはなく、事前に提出された曲を時間通りにやることになっている。

 そういった裏の方面の根回しは得意分野だ。

 

「ま、アミにはちょっと働いてもらうけどな」

「へ? 私ですか」

「あとで文実の岡先輩が来ると思うから対応しておいてくれ」

 

 アミは目を丸くし、手に持っていたペットボトルを胸の前でぎゅっと握った。

 一瞬不安そうに眉を寄せたが、すぐに真剣な目つきでアミは俺を見返してきた。

 

 大丈夫、やれる。そんな意思の光が宿っているのがわかった。

 

「そうだ。みんなに言っておくことがある。おそらく、多田野は全部オリ曲で来るし、カバー曲ばっかりで不安になってるんだろ」

 

 途端に、練習後で汗ばんだ空気がぴんと張り詰める。喜屋武と桃太郎が視線を交わし、ほんの少し唇を噛む仕草を見せた。

 本気でバンド活動をするのに、カバーばかりでいいのか。

 特に多田野の実力を知っている桃太郎は不安でしょうがないだろう。

 

「一つ良いことを教えてやる――お前らの実力と多田野のバンド実力。俺には大して差がないように見える」

「それはカナタンが音楽に詳しくないからやさーね」

「そうだ。俺は音楽に詳しいわけじゃないし、特別耳がいいわけでもない」

 

 そう前置きすると、三人の視線が一斉に俺に集まる。

 

「だから、お前たちは負けないんだよ」

 

 さて、仕込みの続きと行きますかね。

 

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