疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
最近、カナタがやけにモテている。
停滞していた話し合いを仕切ったり、文化祭の準備でリーダーシップを発揮したり。
しかも高校生にしてラノベ作家で、漫画の原作者でもある。そんな肩書きもあってか、気づけばクラスの中心に立っていた。
ほんの少し前まで、変人で、周りに理解されなくて、あたしが世話を焼いてやらなきゃ仕方ないって思っていた相手なのに。
気づけば、みんながあいつに注目して、相談を持ちかけたり、意見を求めたりしている。
その影響は、あたしにも容赦なく降りかかってきた。
「てか、由紀いつまで彼女面してるのかな?」
「ねー。好きならとっとと告ればいいのに」
「振られるのが怖いんでしょ」
「アミちゃんや喜屋武も遠慮しちゃって可哀想だよね」
女子トイレの個室にいたときに聞こえてきた同級生たちの声。何気ない噂話のつもりなのかもしれない。だけど、その一言一言が心に突き刺さった。
あたしは、思わず息を止めてしまった。足音を立てることすら怖くて、ただじっとやり過ごすしかできなかった。
わかってる。否定できない。
あたしは確かに、彼女面してる。
ただの幼馴染みのくせに。
あいつの隣にいることが、当たり前だって顔をしてしまっている。
しかも無意識に、カナタを独り占めしようとしている。
誰かが近づくと胸がざわついて、つい言葉や態度に出してしまう。
周りから見たら、それはきっと鼻につくんだろう。
あたしは普段、女子のまとめ役みたいなポジションだ。
悩み相談を受けたり、意見を調整したり。だからこそ、周りからの信頼だって少なからずあった。
けれど、それは〝変人のカナタに振り回される苦労人〟っていう構図があったからこそ、成り立っていたんだと思う。
そのバランスが崩れた今、あたしはただの出しゃばりに見えてしまっている。
本当は、このままじゃダメなんだ。
幼馴染だからって理由だけで隣に立っていられる時期なんて、そう長くはない。
いつか必ず、カナタには本物の隣に立つ相手が現れる。
あーちゃんかもしれないし、鳴久かもしれない。あるいは、全然別の誰かかもしれない。
そのときあたしはどうする? 幼馴染だからって理由で割り込む? そんなの、許されるはずない。
わかってる。わかってるのに、足が竦む。
きっと、あたしは怖いんだと思う。
もしも想いをはっきり言葉にして、拒絶されたら。
この居心地の良い関係すら壊れてしまうんじゃないかって。
だから中途半端な距離感のまま、幼馴染っていう言い訳の後ろに隠れて。ずっと誤魔化してきた。
このままじゃ、いけない。
それはあーちゃんのバンドにいる鬼頭さんを見ていても痛感する。
彼女だって、多田野君の隣に立てなくなって、結局あーちゃんたちと一緒に新しい場所を見つけていた。
幼馴染だからって安心していられる立場なんて、本当はどこにもない。
どうすればいいのか、答えは出ていない。
いや、答えなんてとっくの昔に出ていたんだ。
ただ、怖くて認められなかっただけ。
あたしは、あいつの隣に居たい。
それが全部だ。
幼馴染だからじゃない。便利な苦労人役だからでもない。
あたしはカナタのことが好きだ。ずっと昔から。
その想いをちゃんと伝える勇気さえあれば陰口なんて、きっとどうでもよくなるはずだ。
そう頭では理解しているのに、心はまだ震えていた。