疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
桃太郎が多田野を好きだと言われてもピンとこなかった。
普通に嫌っているように見えたからだ。
それに、そうだったとしても何か問題があるとも思えない。
「大場さんは鬼頭さんの気持ちを知っていて多田野君に告白した。彼なら何も考えずに付き合ってくれるって思ってね」
「別によくないか? 桃太郎と付き合ってたわけでもないんだし」
寝取られは寝てから言えとはよく言うが、桃太郎の件はまさにそれだろう。
「よくないでしょ。全員同じバンドメンバーだったんだよ? 好きでもないのに見栄張るために告白とか、関係壊す気満々じゃん」
「……あー、なるほど」
言われて初めて、俺も腑に落ちた。
多田野に対して覚えていた違和感もこれだ。
「バンドは人間関係が前提で成り立ってる。それを壊すような行動をするのは、音楽どうこう以前の問題でしょ」
「だよな。技術があろうがなかろうが、信頼関係がなければ成立しない。桃太郎が彼を嫌ってるように見えるのも、その辺のいざこざがあったからか」
ヨシノリは頷き、腕を組んだ。
「多田野君はね、音楽には真剣だけど、人間関係は本当に無頓着なの。悪気があるわけじゃなくて、たぶん〝自分がやりたいことをやる〟ってだけなんだけど……それで傷つく人がいるって、想像ができない」
「はえー、恋愛って面倒くさいな」
思わず本音が漏れる。
俺にとって恋愛なんて漫画やラブコメの題材でしかなく、実際のそれは正直よく分からない。実践編にはまだ遠い。
俺の場合、小学生の頃に単純接触効果でよく話していた女子を好きになったくらいの経験しかない。
結局、俺は誰かを本気で好きになったことなど、一度もないのだ。
だからこそ、思ってしまう。
「しっかし、桃太郎も桃太郎だな。自分の気持ちがはっきりしてるなら告白してりゃこんなことにはならなかったのにな」
「関係を壊すのが怖いんだよ、きっとね」
「その程度じゃ壊れないだろ」
「そういう簡単な話じゃないの」
ヨシノリは苦笑して、机に肘をついた。
「もし告白してフラれたら? 今みたいに隣で笑い合える関係すら失うかもしれない。だから言えないまま、隣にいることを選んじゃうんだよ」
「それって、余計につらくないか?」
「つらいよ。でもね、人によっては〝隣にいられるだけでいい〟って思っちゃうものなの」
ヨシノリの声はどこか優しくて、同時に重かった。
俺は思わず息をつく。そんなふうに割り切れるかどうか、想像がつかなかった。
だが、直感はある。
きっと、そんなことになったら俺は割り切れず、ずっと後悔を抱えることになるのだろう。