疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
文化祭も本格的な準備期間に突入した。
この時期になると、本格的に教室の内装に手を加えることができるため、お化け屋敷や喫茶店などを開く予定のクラスは一気に仕事が増える。
「あー……頭がボーッとする」
ここ最近の俺は自分でもやばいと思うくらいにオーバーワーク気味だった。
一周目の会社では、俺の所属していたチームはいつ誰が休んでも問題ないくらいに業務の引き継ぎがしっかりしていたし、良い意味で全員が替えの効く人材だった。
これはチームリーダーである俺の上司が有能だったことが大きいだろう。
実際、繁忙期こそ残業はあったが、上司自身が積極的に有給やフレックスタイム制度を活用していた。
だが、この文化祭において、俺は悪い意味で替えの効かない人材になってしまった。
必死にエクセルを覚えてくれたナイトや報連相がしっかりしているゴワスのフォローのおかげでなんとか回っているが、俺のは漫研の部誌の作成もある。
リアルと連動と言っても、部誌のボリューム的にそこまで全ての出来事を詳細に描写するわけではない。
そこは作家として培った能力が俺を助けてくれた。
一通り、盛り上がる流れは作れた。
ステージの装飾もできあがったことで、あとはアミ達がステージ裏から駆け出していくところで引いて終了だ。
「「お、お疲れ……」」
修羅場耐性のあるトト先とケイコ先輩も満身創痍といった様子で部誌を仕上げてくれた。
人物などはトト先が担当し、小物や背景――というか人物以外の全てをケイコ先輩が担当してくれたおかげで、この無茶なスケジュールも何とかなった。
「まさか、商業より文化祭で出す部誌のほうがスケジュールキツイとはね……」
「まあ、カミラの聖剣は編集の根本さんが無茶なスケジュールにならないように調整してくれてますからね」
ちなみに、先日打ち合わせを行ったときはさりげなくお高めの栄養ドリンクを差し入れてくれた。
「ポニテ馴染は楽だった」
「そりゃあなたが、あり得ない速度でイラスト関係のこと全部終わらせたからでしょうが」
十二月に発売予定のポニテ馴染に関しても、優良進行をすっ飛ばした神進行となっている。
既に俺が印税を使って行った宣伝も話題となっており、K&Kラジオでもリスナーから祝福の言葉が多く届いている。
編集の由弦さん曰く、この話題性なら重版も狙えると死にそうな顔で笑っていた。
お願いだから由弦さんはもうちょっと休んでくれ。
「田中君、伊藤、東海林。お疲れ様。ゆっくり休んでくれ」
「絵は描けないけど、それ以外のことなら一通りできるから!」
「あとは俺たちに任せろ!」
『うおおおおおお!』
なんか漫研の先輩たちがおかしなテンションになっていた。なんだろう、文化祭の準備期間って酒に近い効果がある気がする。
だけど、俺は空気に酔っている時間はない。
「ありがとうございます。それじゃ、俺はクラスの準備に戻ります」
「自分も戻る……」
「私も……」
俺だけかと思ったら、トト先とケイコ先輩もクマだらけの顔で同じようなことを言い出した。
「お二人もクラスの出し物やってるんですか?」
てっきり、漫研のほうに集中すると思っていたから、少し意外だった。
「二年生は教室全部使ったお化け屋敷だからね」
「イラストは自分たちが担当した」
「文化祭のお化け屋敷とは思えない豪華さ」
とっととカク太郎と小池ケイコが美術担当をしているお化け屋敷ってやばすぎるだろ。
「二年生全体が結託なんてすごいですね」
「うん。普通はクラス単位でバラバラにやるけど、今年はうまく各クラスの代表と実行員を丸め込めてね……」
ケイコ先輩は口の端で笑ったが、その目の下には隈がくっきりと刻まれていた。
「ただ、そのせいで私と都々ちゃんは一睡もしてないんだけどね」
「……お化けより先輩たちのほうが怖いですよ」
俺は心からケイコ先輩だけは敵に回さないことを誓った。