疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第211話 柔らかい枕

 この状態はかなりヤバイ。身体が警鐘を鳴らしている。

 ハイになっている感覚……五年目の死ぬ気執筆期間、締め切りギリギリで六作品を同時に書き上げたあの時にそっくりだ。

 

「さすがに死ぬ前に近い感覚なのは笑えねぇわ……」

 

 あそこまでの無茶はしていないはずなのだが、どこで歯車が狂ったのだろうか。

 無茶のないスケジュールを立てていたはずだった。一周目で培った社会人スキルを使って、自分の限界を見極めて文化祭の準備に臨んだはずだったのに。

 

「カナタ、ほんとにやばいって。保健室に――」

 

 ナイトの声が遠くなる。目の前がぐらりと揺れて、視界が暗転した。

 足が縺れて、そのまま正面にいたヨシノリに突っ込むように倒れこんだ。

 

「カナタ!?」

 

 頭からヨシノリの胸に突っ込んでしまった。なんか意外と固かった。

 

「……ブラがあるから固い」

「はっ倒すわよ」

「もう倒れてる」

 

 情けなく言い返す俺を、彼女は睨みつけてから、ふぅと息を吐いた。

 

「……仕方ないなぁ。保健室、連れったあげる」

 

 半ば引きずられるように連れて行かれ、保健室のベッドで横になる。額に乗せられる彼女の手が、驚くほど優しかった。

 

「ったく……あんたはホント無茶ばっかり」

 

 ヨシノリはベッドの横のイスに腰かけながら深く溜息をついた。

 

「こんなの無茶の内に入らないって、思ってたんだけどなぁ」

「カナタはいつも無茶してるじゃん。そこに仕事増やしたらぶっ倒れるに決まってるでしょ」

 

 傍から見たらそう見えてしまうのだろう。

 だけど、いつものは無茶じゃない。自分に使えるリソースを限界まで使っていただけのこと。

 

 今回はちょっと配分が狂ってしまったが、期間限定のものだからすぐにいつもの状態に戻るだろう。

 

「まあ、文化祭が終わるまでの我慢だ。たまに来る修羅場で踏ん張るのも必要なことだ」

 

 少し気だるい体を起こしながら苦笑いを浮かべると、彼女の表情が曇るのが見えた。

 

「……まだ無茶する気なんだ」

 

 彼女の声は低く、静かだった。その言葉には確かな重みがあった。

 呟きながら、ヨシノリはおもむろに制服の中に手を入れる。

 

「……ん、しょっと」

「は? お前、何を……」

 

 裾から水色の紐が出てきて、彼女の顔がわずかに紅潮する。

 それから衣擦れの音と何かを外す音が聞こえてきて絶句してしまう。

 

「な、何をして?」

「このままじゃ固いんでしょ」

 

 耳まで真っ赤にしたヨシノリはYシャツの下から水色のブラを取り出すと、俺の頭を自分の胸に引き寄せる。さっきよりずっと柔らかい。

 耳に伝わる鼓動がやけに近くて、心地いいリズムで眠気を誘ってくる。

 

「マジで、何をっ……!?」

「次無茶したら、マジで怒るから」

 

 ヨシノリはそれだけ言うと黙って俺を抱きしめたまま、ゆっくりと撫でてきた。

 

「……心配かけてごめん」

「よく言えました」

 

 やけに熱い彼女の体温を感じているうちに瞼が落ちてきて意識が遠のいていく。

 久しぶりに高鳴る鼓動。それは強制的に鎮静化させられることなく、俺の中にあり続けた。

 

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