疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
家に帰り、玄関をくぐった瞬間、俺はその場で座り込みたくなった。
「……おかえり、お兄ちゃん」
出迎えてくれたのは妹の愛夏だった。中二で小柄な彼女は、俺の疲れた顔を見て目を丸くする。
「ちょっと、大丈夫? 顔、真っ白だよ」
「文化祭準備と漫研と……まあ、いろいろ重なっててな」
靴を脱ぐのも面倒で、思わず廊下にごろんと寝転がる。
愛夏は呆れたようにため息をつきながらも、すぐにキッチンへ行って水を持ってきてくれた。
「ありがとな」
「無理しすぎだよ……でも、楽しそうだね」
愛夏はコップを差し出しながら、ふっと笑った。
「文化祭、二日目に友達と行くから。お兄ちゃんのクラスも見に行くし、漫研の部誌もちゃんと買うよ」
「そっか。二日目か」
「うん。だから、倒れるのはそれが終わってからにしてね」
茶化すように言うけれど、その瞳は心配そうで。
俺は苦笑して、コップの水を一気に飲み干した。
「愛夏。幼馴染ってなんなんだろうな」
「どうしたの、急に」
彼女は首をかしげながらも、少し考えるように口元に指を当てた。
幼馴染という存在は難しい。ただの友達よりも近いようで、恋人ではない。
親友というには複雑で、家族のような関係とも違う。
「ちょっといろいろ考える必要があってな」
「ほーお、さては由紀ちゃんと何かあったね」
「お察しの通りだ」
俺は青春こそ碌に経験できなかったが、大人になっていろいろなことを知った。
女性関係の話でいえば、会社の喫煙所で仲の良かった営業さんから様々な話を聞くことができた。
だからこそ、ヨシノリの行動が異性の幼馴染として普通ではない行動だということだけはわかる。
「やっぱ疎遠になってた時期が長すぎたのかもな。俺はあいつのこと、わかったつもりになって何もわかってないんだ」
昔のように接することができれば、隣にいられる。
あのエレベーターアクションでの一騎打ちで俺は、もう二度とヨシノリと疎遠になりたくない、昔のように戻りたいと願っていた。
だが、多田野と桃太郎を見てわからされた。
どんなに大切で強固な絆だと思っていても、それが変わらないことなどないのだと。
「ごみぃちゃんは女心どころか人の心もわかんないもんね」
「それは否定しない」
というか、今さらっとゴミって言わなかった?
「由紀ちゃんといい、お兄ちゃんといい、どうして昔にこだわるのかねぇ」
愛夏は呆れたように呟いた。
「私だって二人と遊んだ思い出は大切だよ? でも、さ。二人は思い出っていうフィルターを通してお互いを見てるんだよ」
それは多分、正しい指摘だ。
昔の記憶に囚われすぎていて、今のヨシノリのことを見られていない部分があるのかもしれない。
「お兄ちゃんも由紀ちゃんも変わったのに、昔のままでなんていられるわけないじゃん」
「関係の再構築か……また難しい課題だな」
俺は、俺たちは幼馴染という言葉に甘えすぎていたのかもしれない。
「とりあえず、無茶は打ち止め。明日は学校休んでナイト先輩に任せて」
「あいつだって大変なのに――」
「親友としてナイト先輩がどれだけ心配したと思ってんの! いいから寝てなさい!」
そして、俺は有無を言わさず自分の部屋に叩き込まれることになるのであった。