疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
ひとまず春のようにヨシノリと一時的に疎遠になることは防げた。
問題が解決したわけではない。先延ばしにしただけに過ぎない。
それでも一安心だ。
「悪いな、アミ」
「いえ、由紀ちゃんに変な誤解されなくてよかったです……あれ、誤解されて困ることってなんでしょう?」
アミは自分の言葉に不思議そうに首を傾げていた。
「本当は俺も未来のアミにそういう青春の景色を見せてやりたいとは思ったんだけどな」
「いいんです。その分、ライブ本番を頑張りますから」
ふんす、と鼻息荒く拳を握りしめるアミが頼もしい。
それにしても彼女も随分と明るくなった。
もちろん、性格的な根本の部分は変わっていないが、それでも前より自分を表現することに対して積極的になったと思う。
そんな彼女の笑顔を見ていると、こちらまで明るい気持ちになれる。
「アフロン、なにしてるさー! 最後の追い込みするさー!」
俺たちが笑い合っていると、喜屋武が駆け足でやってきた。
そうだった。アミたちは多田野たちのバンドとの対バンを控えている。
既に軽音部だけでなく、噂好きの生徒たちの間でも話題になっていることもあり、絶対に負けられないと喜屋武は気負っているのだろう。
でも、大丈夫だ。
仕込みは万全。これで負けるのならば、それは努力の差だろう。
結果が出るまでやるのが努力だ。
だからこそ、不安はない。
「アミ、練習いってこいよ」
俺は、彼女たちを信じている。
「大丈夫だ。絶対勝てる」
「はい! ありがとうございます!」
「絶対勝つさー!」
そう言って走っていく彼女たちの姿は頼もしくて誇らしかった。
「やあ、カナタ。体調の方はもう大丈夫かい?」
「妹と仲の良い親友のおかげでな」
さりげなく後ろから声をかけてきたナイトへ振り向いて答える。
ナイトにはこの前いろいろと迷惑をかけたし、感謝しないといけない。
「僕もカナタも周りを信用しなさ過ぎたんだろうね。お互い抱え込むのはよくないよね」
「本当にな。なんていうか、今回の一件で俺は上に立つのは向いてない」
社会人経験をして俺はできるといい気になっていた。
上司の真似をしてもなかなかうまくはいかないものだ。
というか、マジで俺の上司は有休もフレックスタイム制度も使いこなしてたのに、一度もチームが困ったことはなかった。
ワンマン体制にならないようにチームを引っ張っていたのは、尊敬でしかない。
わかったところで今更かもしれないけど。
「戻るか。立ち話してる時間が惜しい」
「そうだね」
教室に戻ると、クラスメイトたちが忙しそうに動き回っていた。
「あっ、田中君。体調はもういいの?」
「心配かけたな。もう大丈夫だ」
「ごめんねぇ、ずっと田中君任せになっちゃって」
クラスメイトが謝ってきたが、俺は首を振る。
「こっちこそ何でも俺一人でやって悪かったな」
信じて任せる。そんな簡単なことが俺にはできなかった。
仕事ができない俺にすら上司は仕事を適切に振ってくれていた。
どうせできないだろう。そんな風に相手を見下していた俺にはできないことだった。
みんな本気で文化祭を成功させようとしている。
その証拠に教室の一角では衣装を試着して楽しんでいる男子生徒もいるし、机の配置を工夫してカフェスペースを作っている女子もいる。
「よし、文化祭……絶対成功させるぞ!」
『おおー!』
俺の声に呼応してクラスメイトたちが右拳を突き上げる。
「やっぱり、カナタは人の上に立つの向いてると思うけど」
そんなナイトの言葉が耳に残った。