疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第22話 クラスメイトのキャラシート

 俺の二周目の高校生活は、一周目と打って変わり賑やかなものになっていた。

 クラスでは、ヨシノリ、ナイト、アミというキラキラした奴らと連み、部活ではトト先との有意義な創作談義もできる。

 そんな生活を送る中、俺にも心境の変化があった。

 

 それは今まで関わっても得るものはないと決めつけていた人種から、意外にも学ぶことがあると気づいたことだ。

 

 例えば、漫研の人たち。

 彼らは一見、漫画を読んだりアニメを見ているだけの集団のように見えて、実は真面目に部活動に取り組んでいた。

 原稿をやっているのがトト先だからと負い目を感じているのかもしれないが、トト先の作品が日の目を見るために環境を整えているのは彼らだ。

 俺は執筆に集中するあまり、周りが見えていなかったのだと痛感させられた。

 

 クラスの中でいえば、ナイトもそうだ。

 あいつはサッカー部でイケメンだから何もしなくても人が寄ってくるのだと思っていた。

 

 しかし、それは違った。

 

 容姿はあくまでも入り口に過ぎず、寄ってきた人を離さないだけのトーク力があいつにはあったのだ。

 話題を提供する力、提供された話題を膨らませる力、話題にリアクションする力。この三つを集団の中でバランスよく使っていたのだ。器用万能とは恐れ入った。

 

「はぁ……疲れる」

 

 学食でいつものメンバーと昼食を取っていると、つい疲労感からため息をついてしまう。

 トレーの上には俺の選んだ生姜焼き定食が並んでいるが、どうにも箸が進まない。

 向かいに座るヨシノリは、目の前の大盛り唐揚げ定食に箸を伸ばし、サクッとした衣を噛みしめた。

 

「やっぱり揚げ物は正義だね!」

 

 そう言って満面の笑みを浮かべながら、ご飯をかきこむ。

 

「お前、よくそんなに食えるな……」

「運動するからだよ! バスケのためにもちゃんと栄養取らないと!」

 

 学食のメニューは男子高校生向きのメニューが多く、大盛りは一般的な大盛りよりも量が多いというのに。スポーツ少女なのにヨシノリがムチムチなのは、この食生活が原因なんだろうなぁ。そりゃ運動やめたら太るのも当然だ。

 俺はヨシノリの食欲に圧倒されながら、自分の生姜焼き定食に箸をつけた。

 

「ちゃんと噛んで食べなさいよ」

 

 その隣でアミはくすくすと笑いながら、俺たちのやり取りを眺めていた。

 

「ふふっ、由紀ちゃん。お母さんみたいですね」

「勘弁してよ……」

 

 アミの言葉に、ヨシノリは苦笑しながら肩をすくめる。

 俺の高校デビューに協力してくれるということもあり、最近のヨシノリは俺の生活態度にやたらと口を出してくる。未来では完全に疎遠になっていた分、その変化が少しばかり心地よかった。

 

「固形物は疲れるんだよなぁ」

「よく噛んだほうが脳が活性化して集中力アップにも繋がるし、忠告は聞いておいたほうがいいよ」

 

 ナイトが大盛りのスタミナ定食をつつきながら、さらりと助言をくれる。運動部だけあって何気に結構食うよな、こいつ。

 

「いいよ。執筆中はガム噛んでるし」

「それは逆に二度手間じゃないのかい」

 

 作業しながらできる以上、決して二度手間ではない。あくまでも栄養補給と咀嚼動作を分けているだけだ。

 

「いい加減にしなさいよ、この執筆マシーン」

「よせやい、褒めたって何もでないぞ」

「だから褒めてないっての!」

 

 ヨシノリがジト目を向けながら、俺の額を人差し指で軽くつつく。まるで幼馴染の特権を行使するかのような自然な仕草に胸が高鳴る。うん、この感情は小説の糧になるな。

 

「執筆といえば、カナタは漫研でうまくやっているのかい?」

 

 ナイトが興味深そうに尋ねてきた。

 俺は味噌汁で口の中の米を胃に流し込みながら答える。

 

「ああ、最近はトト先だけじゃなくて、いろんな先輩から声かけられるようになったよ」

「ははっ、充実してるようで何よりだよ」

「そういうナイトはどうなんだ?」

 

 俺がナイトに話を振ると、彼は軽く息を吐きながらサッカー部の近況を語り始めた。

 

「サッカー部は、まあ順調かな。新入部員が一気に増えたから、練習もしやすいし」

「確か女子マネがたくさん来て喜ばれたんだっけ? イケメン効果は絶大だねぇ」

 

 揶揄うような口調でヨシノリが言うと、ナイトは苦笑いを浮かべた。

 

「おかげさまで先輩にもかわいがられてるよ」

「嫉妬でボールの代わりにでもされたのか?」

「いや、そっち〝かわいがり〟じゃないから」

「ぶふっ……くくっ、カナタ君、どうして発想がそう物騒なんですか?」

 

 アミが堪えきれずに吹き出す。

 でも、サッカーやってたらよく言うだろ。友達はボールだって。

 

「バスケ部のほうはどうなんだい?」

 

 ナイトが話を振ると、ヨシノリは箸を置いて少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

 

「中学のときの先輩もいたし、だいぶやりやすいわ」

「同中の先輩か。誰がいたんだ?」

「あんたに言ってもわかんないでしょ」

 

 興味本位で聞いたら、ものすごい勢いで睨まれた。

 言外に「あたしのことすらわからなかった癖に」と言いたいのだろう。

 

「カナタは人に興味なさそうだものね」

 

 ナイトにも苦笑されてしまった。

 

「バカ言え、これでも由紀に言われて反省したんだ」

「ホントにぃ?」

 

 ヨシノリは疑わしげな視線を向けてくる。

 

「ああ、ちゃんとクラスメイトの情報はシートにまとめてデータとして管理してるぞ」

「違う、そうじゃない……」

 

 俺の言葉に、ヨシノリがこめかみを押さえる。

 

「シートにまとめてって、どうやってるんですか?」

 

 アミが興味を持ったらしく、質問してきた。

 

「スキャナーで取り込んだクラス名簿の画像データから文字を抽出して表計算ソフトに貼り付けて、それぞれの特徴を記載しただけだぞ」

「一応画像データにして携帯にも送ってある」

 

 こういうとき、スマホじゃないのは不便だ。早く買い換えたいところである。

 一応、スマホ自体はあるのだが、まだ高校生には浸透してないんだよな。

 

「ほら、これがクラスのキャラシートだ」

 

「「「うわぁ……」」」

 

 画像を見せたところ全員にドン引きされてしまった。何故だ。

 

「どれどれ。田中騎士、同じクラスのイケメン。サッカー部所属で爽やかで人当たりがよく、誰にでも優しい。イケメンなだけじゃなく、話もうまいし、ノリもいい。クラスの中心になれる素質がある。隙があるようで意外と隙がない。いつも自然体で接してるように見えて、絶妙な距離感を保ってる。誰とでも仲良くできるけど、深入りしすぎない、か」

 

 ナイトはその見た目と性格から、女子からの人気は圧倒的だ。

 しかし、決して誰か一人に肩入れするようなことはなく、あくまで全員に平等に接する。

 だからこそ、恋愛感情を持たれやすいのに、特定の誰かに入れ込んだりはしない。

 そして、それを本人は意図的に行っているのだ。

 

「す、すごい分析されてますね」

「友達相手にすることじゃないわね」

「まあ、僕を知ろうとしてくれるのは嬉しいよ。うん」

 

 珍しくナイトは引きつった笑みを浮かべていた。

 おっ、飄々としたイケメンの新鮮な反応だ。貴重なリアクションゲットである。

 

「何でこんなイカレたことしてんのよ」

 

 ヨシノリは呆れた様子でため息をつくと、俺に向かってジト目を向けた。

 

「こうでもしないと忘れるから」

「人に興味持ててないじゃない」

「逆だ。キャラは背景の作り込みがないと空気になる。だからこそ、興味を持つためにも情報を記録していくんだ」

「だから人間として接しなさいよ!」

「本当にカナタ君は小説脳なんですね」

 

 アミは苦笑した後、楽しそうに笑ってから告げる。

 

「でも、興味を持つために相手を知ろうとするって素敵なことだと思います」

「そうだね。僕たちのこともどんどん知っていってほしいと思ってるよ」

 

 柔らかな笑顔を浮かべて告げたアミの言葉に、ナイトが同意する。なるほど、仲の良い友達から自分の在り方を肯定されるのは、ヨシノリに執筆活動を肯定されたときとは違う心地良さがあった。

 

「おっ、じゃあ遠慮なく質問させてくれ」

「食事中はメモとペンを置きなさい……」

 

 さっそく取材に取り掛かろうとしたが、呆れ顔のヨシノリにため息をつきながら止められてしまった。

 

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