疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第220話 キクりん

 その後、俺たちは三年生のフロアに向かった。

 ガチホラー案件は忘れるように努力しよう。

 

 三年C組の教室では、こじんまりとした縁日が行われていた。

 照明は少し落とされ、提灯やカラフルな電球が吊るされている。

 教室の一角には金魚すくいを模した水槽、射的台や輪投げ、綿あめ機まで置かれていて、まさに縁日の空気そのものだ。

 

「わーっ! すごい、ほんとに祭りみたいじゃん!」

 

 ヨシノリはメイド服のまま駆け寄って、まるで子どもみたいにきょろきょろと見回す。

 俺たちは券を買い、順番にゲームを回ることにした。

 

 まず挑戦したのは射的だった。

 ヨシノリが狙ったのは、棚の上段の的だ。

 

「絶対落とす!」

 

 宣言通り引き金を引き、乾いた音とともに上段にあった的が、見事に全部撃ち落された。

 

「……え?」

「お、おい、まとめて全部!?」

 

 店主役の三年生が唖然として声を上げる。

 

「カナタ、見た!?」

 

 ヨシノリが満面の笑みで振り返る。

 

「さすが〝弾荒らしのユキ〟だな」

「なっつ。ヨシノリ以外のあだ名久々に聞いたわ」

「あだ名ってか、通り名だろ。WANTED的な意味で」

 

 大島周辺の祭りの的屋じゃ〝ゲーム落としのリンタロウ〟と並んで完全に指名手配犯的な扱いだったからな。

 二人共小学校の頃から身長高かったからリーチあるんだ。

 それから残りの弾でヨシノリは的をあと一つというところまで落とした。

 

「ふふん! あたしのエイム力を見たか!」

「団地でエアガン連射してサバゲーしてた奴は言うことが違うわ」

 

 あのときはエレベーターアクション以上に紀香さんがブチギレてたけど。

 ちなみに、大島の忍者こと平井はお説教前に姿を消していた。あいつマジで逃げ足だけは早いんだよな。

 

「はい、ぬいぐるみ一個までね!」

 

 先輩が苦笑しながらクマを差し出してくれる。ヨシノリは嬉しそうに受け取って抱きしめた。

 次は輪投げだ。

 

「カナタの番だね!」

 

 俺は三本の輪を手に取り、的を慎重に見据える。

 子どもの頃、祭りの輪投げで一度も当てられなかった記憶がよみがえる。今度こそ、と息を整える。

 

 一投目――外れ。

 二投目――かすりもしない。

 三投目――かろうじて端に引っかかったが、すぐに転げ落ちた。

 

「いくらなんでも、ノーコンすぎない?」

 

 ヨシノリが頬を引きつらせて笑う。

 

「これでも真剣にやったんだけどな」

「カナタがこういうとこで外すの、なんか安心するわ。人外の人間アピールみたいな?」

 

 ケラケラ笑う彼女の横顔に、俺は思わず苦笑を返すしかなかった。

 

「また全部撃ち落されたァ!」

 

 俺たちが縁日に興じている間、背後から三年の先輩の悲鳴のような声が聞こえてきた。

 

「うわっ、でっか……」

 

 振り替えると、そこにいたのは他校の制服を身に纏った長身の男子生徒だった。

 身長は優に190cmを超えており、銃を構える腕はとんでもないリーチだ。

 

「ま、こんなもんか」

「さすが、射撃は君の独壇場だね」

 

 その隣にはうちの高校の制服の女子がいた。あのリボンは三年生か。

 

「むぅ……」

「何でお前は対抗心燃やしてるんだよ」

 

 俺の横では何故かヨシノリが件の長身男子を睨みつけていた。

 

「カナタは悔しくないの! 射撃はあたしたちのホームよ!」

「ヨシノリだけだろ、それ」

 

 俺なんて基本囮役だったし。

 

「カナタ、ヨシノリ?」

 

 俺たちの声が聞こえたのか、長身男子が怪訝な表情で振り返る。

 

「どうしたの、凛太郎?」

 

 長身男子の彼女は、彼を凛太郎と呼んだ。

 

「「凛太郎?」」

 

 その名前には聞き覚えがあった。

 

「お前〝カナタ〟だよな……てことは、そこのメイドって〝ヨシノリ〟なのか?」

 

 小学校のときよりも更に身長が伸び、眼鏡をかけたそいつは俺たちの良く知る人物だった。

 

「「もしかして、キクりん!?」」

 

 キクりんこと菊池凛太郎(きくちりんたろう)。俺とヨシノリにとって、疎遠になってた幼馴染の一人だ。

 

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