疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
キクりんは小学校の頃、必ず一緒に遊んでいた幼馴染の一人だ。
当時からデカかったが、まさかここまで伸びるとは思わなかった。見上げるのに首が疲れるレベルだ。
「キクりん、お前でっかくなったなぁ!」
「カナタは相変わらずチビのままだな」
「はははっ! お前に比べたら大抵の人間はチビだよ!」
なんだろう。久しぶりに会ったけど、雰囲気は全然変わっていないことに安堵を覚える。
「で、そこのガキ大将はどういう突然変異が起きたんだ」
昔のガキ大将フォルムをよく知っているキクりんは、妖怪でも見たような目つきでヨシノリを興味深そうに眺めていた。
「ほら、進化すると見た目がガラッと変わるモンスターいるだろ? 魚がタコになったりとか」
「いやいや、もう性別変わってるレベルだろ」
「あんたら、はっ倒すわよ!」
ヨシノリが両拳を構えて怒鳴る。けど、その顔は笑っていた。
「相変わらずだなぁ……」
俺は思わず口元を緩める。三人でこうしてじゃれ合ってる光景は、まるで小学生の頃の帰り道みたいだ。
「ああ、そうだ。俺たちだけで話し込んじゃってすみません。キクりんの彼女さんですよね?」
俺はキクりんの隣にいた先輩に気づいて声をかける。
「うん、凛太郎の彼女の
「一年B組の田中奏太です。キクりんからはカナタって呼ばれてます」
「同じくB組のよくある漢字の佐藤、由紀です。あたしはヨシノリって呼ばれてます」
それぞれ自己紹介をすると、左東先輩はにこやかに微笑んでくれた。
美人だけど、気取らない感じの自然な雰囲気の人だ。
「へぇ、凛太郎の幼馴染は私の後輩かぁ……いろいろ昔の話とか聞きたいなぁ?」
「……勘弁してくれ」
キクりんは困ったように頭を掻く。
なんだか女性にタジタジになっているキクりんを見るのは新鮮だ。
小学生の頃から大人びていて、俺たちを一歩後ろから見ているようなクールな奴だった。
まあ、いつまでも小学生の頃のままな訳はないから当たり前ではあるか。
「そうだ。来てるのはキクりんだけなのか?」
「シューヤと平井も来てるぞ。彼女紹介しろってうるさいから撒いてきたけど」
「……容易に想像できるわね」
ヨシノリがため息混じりに肩をすくめる。俺も同感だ。小学生の頃からシューヤと平井は余計な茶化しで人をからかうのが好きだった。キクりんが彼女を連れていると知れば、ここぞとばかりに冷やかし倒すのは目に見えている。
「というわけで、俺たちはそろそろ行くわ」
「ああ、デートなのに引き留めちゃってごめんな。文化祭デート楽しんでくれ」
「そっちもな」
「ちょ、キクりん。あたしたちはそんなんじゃないっての!」
懐かしい再会だったが、いつまでも引き留めているわけにはいかない。
「一応連絡先だけ交換しておこう」
「そうだな」
「昔は連絡網から家電にかけてたからなんか新鮮ね」
俺たちはRINEを交換して、別れることとなった。
「そうだ。カナタ」
「ん?」
去り際、キクりんは思い出したように振り返って告げる。
「ラノベの新人賞とコミカライズ、おめでとさん」
「えっ、何で知って……」
心臓が一瞬止まったかと思った。小学校卒業以来会っていないのに、何で知っているんだ。
「そりゃ田中カナタってペンネームで大賞取るのはお前だろ」
当然だと言わんばかりの口ぶりに、絶句してしまう。
どこにでもありそうなペンネームから俺だってたどり着けるわけがないだろうに。
「ガキの頃からずっと小説家になりたいって言ってたろ」
その言葉で、忘れかけていた記憶が一気によみがえる。
夕暮れ、帰り道にいつものメンバーと一緒に歩きながら、俺は確かに小説家になるなんて大口を叩いていた。
あのときはまだ子どもの戯言でしかなかったのに、ずっと覚えていてくれたのか。
「いや、だからって――」
「お前なら夢を叶えるって信じてたからな」
俺はそのとき、小学校のときでもあまり笑わなかったキクりんが満面の笑みを浮かべるのを見た。
「お前には芯がある。だから本気で夢と向き合い続けるんだろうなって思ってたから……幼馴染としてどうしようもなく、嬉しいんだ」
いつもクールで一歩引いた立ち位置にいて、大人びていたキクりんからかけられたその言葉が――俺にはどうしようもなく、嬉しかった。