疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第225話 ミスターコンテスト開幕

 体育館へ向かう廊下はすでにざわめきで満ちていた。

 男子はナイト以外にカッコイイ人がいるのか、女子衣装がすごいらしい。そんな声が飛び交い、会場に近づくほどに熱気は増していく。

 

 舞台袖に着くと、出場者たちが最後のチェックをしているのが目に入った。

 華やかなライトに照らされるステージでは、すでに司会進行である文化祭実行委員長の岡絵里先輩がマイクを握っていた。

 

『それでは、これより慶明高校文化祭恒例! ミスター&ミスコンテストを開催いたします!』

 

 大きな歓声が沸き起こり、体育館の天井を震わせる。

 

『まずはミスターコンテストから! 栄えあるトップバッターは一年B組、田中騎志!』

 

 名前が呼ばれると同時に、スポットライトが舞台袖に差し込んだ。

 執事服に身を包んだナイトが一歩踏み出すと、客席から黄色い歓声が弾け飛んだ。

 

「きゃーっ!」

「ナイト君ー!」

「こっち見てー!」

 

 女子たちの歓声が体育館を突き抜ける。彼は動じることなく、優雅に一礼してみせた。

 銀のトレーを片手に、優雅に一礼するその姿は、二次元から飛び出てきたのかよと思うレベルである。

 

 会場は一瞬で夢の舞台に引き込まれた。

 この場に愛夏がいたら、黄色い歓声を上げる女子を見て勝ち誇った顔をするんだろうなぁ……。

 

 出場者は三分のアピールタイムが与えられる。

 ナイトは一体何をするのだろうか。

 

『どうも、田中騎志です』

 

 落ち着いた声で自己紹介を終えると、ナイトはトレーを軽く持ち上げた。

 その上には、一輪の赤い薔薇が置かれている。

 

『おっと、田中君。そのトレーに乗っているのは……薔薇ですか?』

 

 岡先輩が興味深そうにマイクで問いかける。

 

『ええ。本日は文化祭にお越しいただいた皆様へ、感謝のしるしとして』

 

 ナイトは薔薇を手に取り、最前列に向かって投げた。

 女子から「きゃああああ!」という歓声が爆発して取り合いが始まる。

 ホームランボールかよ。

 

『ひゃーっ! やりますねぇ! これは会場のお嬢様方の心を一発で射抜いたんじゃないですか!?』

『光栄の極みです』

 

 にこやかに返しつつ、ナイトは舞台中央に戻り、くるりと一回転。

 執事服の裾を翻しながらトレーを胸元に添えて、一礼。

 その仕草は芝居がかっているのに、どこまでも自然で、まるで本物の執事が主に礼を尽くすかのようだった。

 

『最後に一言、観客の皆さんへどうぞ!』

『お嬢様方。どうか本日は、夢のようなひとときをお楽しみください』

 

 低く響く声がマイクに乗った瞬間、体育館の天井が割れるかと思うほどの黄色い歓声が沸き起こった。

 舞台袖で見ていた俺は、ただただ呆れるしかない。

 

 いや、絶対愛夏の仕込みだろ。あいつ何やってんだマジで。

 

『続いての出場者は一年A組、多田野遊君!』

 

 名前が呼ばれると同時に、舞台袖から一人の男子が歩み出る。

 黒髪マッシュの髪型に黒スーツ、その肩にはベース。軽音部のライブ衣装らしいが、シンプルながらも舞台映えする。

 

『えー、多田野遊です』

 

 彼はマイクを受け取ると、さらりと言った。

 

『おお、これはベースを背負っての登場! 音楽系のアピールですね?』

『はい。明日、軽音部でライブをやるので……ちょっと宣伝も兼ねて』

 

 観客がどよめく中、彼はベースを軽く構える。

 ピックを走らせ、重厚な低音が体育館を揺らした。

 短いフレーズにも関わらず、音の存在感は圧倒的で、観客の耳を一瞬で奪う。

 

「おぉーっ!」

「ベースかっけぇ……!」

「なんか大人っぽい……」

 

 観客からどよめきが上がる。演奏は短いが、それだけで彼の実力は伝わった。正確にはベースを引ける人間が少ないから、単純になんか格好良いという感想なのだろうが。

 

『いやぁ、低音が心臓に響きましたね! これは軽音部のライブも期待大です!』

『ありがとうございます。明日もぜひ来てください』

 

 彼は深々と礼をして、静かに舞台袖へと戻っていった。

 その姿は派手さこそないが、確かな実力と落ち着きが漂っていた。

 女子たちの拍手も多く、まさにナイトとの二強と言えるだろう。

 その後はガチ枠とネタ枠が入り乱れつつ、先輩たちが出ては捌けていく。

 

『続いての出場者は一年B組、田中奏太!』

 

 岡先輩の声が再び響く。

 舞台袖で一瞬、心臓が跳ねた。

 会場の視線がすべて自分に向かう。そんな感覚に足がすくみそうになる。

 

 俺は深呼吸をしてからゆっくりとステージへ足を踏み出した。

 

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