疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
『それでは、最初の出場者を紹介します! 一年B組、佐藤……えーっと、
司会であり岡先輩の声とともにライトが当たる。
ステージ中央に立ったのは、普段とは違って髪を高めのポニーテールに纏めたアミだった。
いつものおっとりした空気を纏っているものの、その瞳には強い意志が宿っているように見える。
『えっと……はじめまして。一年B組、佐藤――』
そこで一拍置き、彼女は観客を見渡してから声のボリュームを上げて続けた。
『愛美麗と書いて〝アフロディーテ〟と読みます!』
体育館の空気が一瞬止まる。
「えっ!?」
「アフロディーテ!?」
「名前やば!」
「キラキラネームすぎるだろ!」
次の瞬間、客席から笑い混じりのざわめきが起こった。
俺は思わず感動してしまった。あのアミが、コンプレックスだった自分の名前をこんなふうに大勢の前で堂々とネタにしてみせるなんて。
仲間内ではネタにすることも多々あったが、こんな大舞台でやるとは思ってもみなかったのだ。
『え、えー……こちら、佐藤さんご本人曰く〝アフロディーテ〟と読むそうです! えっ……本当にそうなんですか!?』
司会の岡先輩が半信半疑で問いかける。
『はい、本当です!』
アミはにっこり笑って答える。
『まさか本物の女神が慶明に在籍していたとは……! これはもうミスコン優勝待ったなしですね!』
『や、やめてくださいよ~!』
アミが両手をぶんぶん振ると、客席からクスクスと笑いが起きた。
岡先輩の軽妙なツッコミと、アミの素直なリアクションが絶妙に噛み合っている。
それだけで会場全体が一気に柔らかい空気に包まれた。
『ずっとコンプレックスだったんですけど……今日は思い切ってネタにしちゃおうと思いまして!』
そう言って照れくさそうに笑う彼女に、客席から自然と拍手が起きた。
小さな勇気が、確かにみんなの心を掴んだのがわかる。
『素敵です! では、そんなアフロディーテさんの特技は?』
『はい、ギターの演奏です!』
『おぉ~! ギター! しかもそのギター……ステージ映えすごいですね!』
『ありがとうございます。せっかく〝アフロディーテ〟なんて名前を持ってるので……美の女神らしく、少しでもみなさんを魅了できたらなって』
そう言ってギターを抱え直し、指を弦に滑らせる。
その瞬間、柔らかい空気に包まれていた体育館の空気が変わる。
アミの表情がおっとりしたものから一転して鋭い目つきが印象的なクールな表情へと切り替わる。
エフェクターを足で踏み、卓越した技術でギターをかき鳴らすと、観客の誰かが息を呑むのが伝わってきた。
おっとりしていて、どこか頼りなげに見えても、ギターを弾くときのアミは別人だ。
演奏に合わせて体育館はしんと静まり返り、誰もが音に集中している。
自己紹介のときは、おっとりとした美少女が勇気を揺り絞ってミスコンに出場したように見えただろう。
だが、今は違う。
ステージに立っていたのは、音で体育館の空気を支配する紛れもない美の女神だったのだ。
最後のフレーズが鳴り終わった瞬間、体育館は大きな拍手に包まれた。
波のように拍手が広がり、会場全体が彼女の勇気を讃えていた。
『ありがとうございましたっ!』
深く頭を下げるアミ。頬は赤く染まっているけど、その顔は充実感で満ちていた。
『素晴らしい演奏でした! 名前をネタにするユーモアと、確かな演奏力。ギャップで一気に会場を掴みましたね!』
岡先輩が興奮気味に評すると、客席から再び笑いと拍手が起こる。
『最後に宣伝なんですけど、明日は軽音部でライブをするので、是非見にきてくださいね! ミスターコンテストの多田野君のバンドとも対バン予定です!』
『おおっと! また新情報ですね! これは見に行くしかない!』
アミの宣伝に対して大袈裟にリアクションをしたあと、岡先輩は茶目っ気たっぷりに尋ねる。
『では、改めてお名前をお聞きしてよろしいですか?』
『
『やっぱり何度聞いてもインパクト抜群ですね!』
笑いと驚きで始まり、演奏からのまた名前をオチに持ってきたアミのアピールタイム。
これは間違いなく、今日の一番目として最高の幕開けだった。