疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
体育館は、最後の出演者が退場してもしばらく熱気を失わなかった。
歓声と拍手の余韻、客席を駆け抜けるざわめき。
ステージ上では文化祭実行委員長の岡先輩がマイクを握り、観客を見渡していた。
『はいっ! 全員のアピールが終わりました! いやぁ、今年もすごかったですね! 個性豊かな出場者の皆さんに、盛大な拍手をお願いします!』
どっと湧き上がる拍手。会場全体がひとつになったような熱気に包まれる。
岡先輩は肩まで伸ばした髪を揺らしながら、にこやかに観客へ語りかける。
『それでは、ここからいよいよ結果発表に移ります!』
場内の空気が一気に張りつめる。
生徒会役員が封筒を持ってステージへ駆け上がり、岡先輩へと手渡した。
ざわめきの中、封を切る岡先輩の仕草ひとつで、まるでテレビ番組の決勝戦みたいな緊張感が走る。
『まずは……ミスターコンテストの結果から発表します!』
体育館中が水を打ったように静まり返る。
俺はというと自分の名前が呼ばれるなんてこれっぽっちも思っていない。
順当にナイトが優勝。次点で多田野といったところだろうか。
『栄えあるミスターコンテストの優勝は……一年B組! 田中奏太くん!』
「……………………は?」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
次の瞬間、客席が爆発したようにどよめき、歓声と拍手が一斉に押し寄せてきた。
「やっぱ田中君だよね!?」
「小説家でカッコいいなんて反則!」
「普段とのギャップがやばかったよね!」
ざわざわと広がる声を聞きながら、俺は心の中で頭を抱えていた。
いや、なんでだよ!
絶対ナイトだと思ったのに。なんなら多田野だっていい勝負してただろ。
なのに、なんで俺なんだ。
……いや、落ち着け。理由を考えろ。物事には必ず原因と結果がある。
俺の出番を思い出す。執事服姿と普段のギャップ。それから〝高校生にしてプロの作家〟というインパクト。
具体的に功績を持つすごい人という肩書きは、こういう場で無駄に補正がかかる。
俺が有名人というわけではないが、文化祭の空気なら「すげぇ」と思ってしまうのも無理はない、か。
拍手に背中を押されるように、俺は壇上へと上がった。
『優勝した田中君! 今の気持ちをどうぞ!』
マイクを渡され、逃げ場がなくなる。
「あー、えっと……驚いてます。まさか自分が選ばれるとは思ってませんでした」
『またまたー! みんな投票しながら〝普段とのギャップがすごい〟〝プロ作家は反則〟って盛り上がってたんですよ!』
「ははっ……ありがとうございます」
場違い感で胃が痛い。笑顔を浮かべてなんとか頭を下げるのが精一杯だ。
『じゃあ、続いてミスコンテストの結果を発表します!』
またしても封筒が開かれる。場内が息をのむ。
『優勝は……一年B組! 佐藤愛美麗さん!』
アミの名前が響いた瞬間、体育館が地鳴りのような歓声に揺れた。
「アフロディーテぇぇぇぇぇ!」
「名前のインパクトからギターまで完璧すぎ!」
「あとおっぱいがデカい!」
客席の熱狂はさっきの比じゃない。
アミはステージに呼ばれて小さく頭を下げ、少し照れくさそうに笑った。
だが、その笑顔が会場をさらに沸かせていく。
『おめでとうございます! いやぁ、やっぱり名前をネタにする勇気と、あの演奏が決め手でしたね!』
「は、はい……ありがとうございます……!」
アミは緊張で声を震わせながらも、はっきりと答えた。
『アフロディーテさん、最後に一言どうぞ!』
「今日は勇気を出して名前を出せてよかったです。二日目のライブもぜひ来てください!」
体育館がまた拍手に包まれる。
予想外のことは起こったが、アミがこれだけ注目されたのは結果オーライだ。
『はい! これで今年のミスター&ミスコンテスト、見事優勝したのは一年B組の田中奏太くん、そして佐藤愛美麗さんでした! お二人に、もう一度大きな拍手を!』
岡先輩の声とともに、観客は総立ちで拍手を送る。
まさかの〝一年B組ペア〟の同時優勝。
俺とアミは並んで壇上に立ち、深々と頭を下げた。
『いやぁ、まさか一年生が揃って優勝するとは思いませんでしたね! それも同じクラス! これは奇跡ですね!』
岡先輩は大げさに煽って会場を盛り上げる。
『田中君、アフロディーテさん、本当におめでとう! 最後に、二人から観客のみんなへメッセージをお願いします!』
俺が先にマイクを渡された。
「えっと……今日はありがとうございました。普段は地味に過ごしてますけど……こういう文化祭の場で、ちょっとでも何かを残せたなら嬉しいです」
続いてアミへとマイクを回す。
「今日は、勇気を出して舞台に立ててよかったです! みんなと一緒に文化祭を楽しめて、本当に幸せです!」
言葉を言い終えた瞬間、再び体育館が揺れるような拍手に包まれた。
『これにて慶明高校文化祭、毎年恒例ミスター&ミスコンテスト、閉幕です! みんな最後までありがとう! 文化祭はまだまだ続きます、思い切り楽しんでいきましょう!』
岡先輩の声が響き渡り、場内は一気にクライマックスを迎えた。
歓声と拍手、熱気と笑顔。
その渦中に立ちながら、俺は明日のライブが楽しみで仕方がなかった。