疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
昼前、クラスのコスプレ喫茶がようやく一段落した頃だった。
客の波が途切れた瞬間を見計らって、俺は少し背伸びをする。
今日も結局バタバタしているが、昨日よりは余裕がある。アミと鳴久が抜けた分だけ穴は大きいけど、みんなでカバーしてなんとか形にはなっていた。
そこへ、廊下から聞き慣れた声が飛び込んできた。
「お兄ちゃーん!」
思わず振り返る。
入口から元気いっぱいに手を振って入ってきたのは、妹の愛夏だった。
隣には、同じくらいの年頃の子が二人。愛夏の中学の友達だろう。
愛夏のことだから、ナイトを自慢したくて連れてきたのだろう。
ナイトは相変わらず完璧な執事服姿で接客をこなしていて、女子客たちを虜にしていたから。
「いらっしゃいませ、愛夏ちゃん。中学の友達?」
ナイトが柔らかい笑みを浮かべて、愛夏たちを迎える。
「来たよ、ナイト先輩!」
「い、イケメン……」
「すご……本物の執事みたい」
友達二人は目を輝かせている。
ほら見ろ。やっぱりナイトを見せびらかしたかっただけじゃないか。
そう思っていた矢先、愛夏が胸を張って言った。
「で、紹介するね! こっちが私のお兄ちゃん!」
「……は?」
何でそこでナイトじゃなくて俺を紹介するんだ。ナイトを自慢したかったんじゃなかったのか。
予想外すぎて、思わず声が漏れた。
「この人が、マナーナのお兄さん!?」
友達の一人が驚きの声をあげる。
「愛夏がいつも話してた作家のお兄ちゃん!? こっちもイケメンじゃん!」
もう一人の子も目を丸くしていた。
「いつも話してた?」
「はい、愛夏ってば毎日どっかでお兄さんの話してるんですよ」
「ちょ、ちょっと!」
愛夏が慌てて友達の口を塞ごうとするが、一人を抑えるともう一人が口を開く。
「私、
「春奈!」
もう一人の子を抑えたまま、愛夏が顔を真っ赤にして叫ぶ。落ち着いてきたとはいえ、店内であまり騒がないでくれ。
隙を見て愛夏の手から逃れた友人は、にゅっと俺の前に現れて自己紹介をする。
「
友達二人の名前は、沢城春奈と蓼丸冬樹というらしい。
春奈はボブカットの活発そうな女子で、人懐っこい笑顔が印象的。
冬樹は細身の女子で、眼鏡をかけた理知的な雰囲気だ。
ふむ、みんな季節が名前に入っているが、秋だけはいないのか。
「春奈と冬樹か。いつも妹が世話になってる。ありがとな」
「「ええ、まったくその通りで」」
「二人とも!」
愛夏がここまでペースを乱されるとは珍しい。
珍しいものを見たからか、さっきからナイトが接客そっちのけでこっち見てるし。
「お兄さんも大島中学出身なんですか?」
「ああ、一応OBではあるな」
記憶には全く残っていないけど。
「うーん、こんなすごい人いたら忘れないですけどねぇ」
冬樹が俺をまじまじと見て感心する。
そりゃすごくなったのは今年からだから仕方がないだろう。
「……あれ?」
春奈がこちらを見て首をかしげた。
視線の先には、ちょうど近くを通りかかったヨシノリの姿があった。
「もしかして……由紀先輩ですか!」
「え?」
ヨシノリが目を瞬かせる。
「もしかして、春奈!?」
「やっぱり! 中学のとき、バスケ部で一緒に練習してましたよね!?」
春奈が一歩近づいて、嬉しそうに声を弾ませた。
「懐かしいわね、元気にしてた?」
「はい、べらぼうに元気です!」
どうやら春奈はヨシノリの部活の後輩だったらしい。
まあ、運動部っぽい雰囲気はあったから納得でしかない。
「えっ、てか、メイド服可愛いですね! ビックリしましたよ!」
「でしょー? これで昨日のミスコンもいいとこまで行ったのよ?」
「由紀先輩が優勝できないなんて、どんな強敵がいたんですか!?」
「それは午後のライブでわかるわ」
何にせよ、愛夏も中学でうまくやれているようで安心した。
結局、愛夏が一番自慢したかったのはナイトでもなく、ヨシノリでもなく、俺だったらしい。
そのことがちょっとだけ嬉しかった。ちょっとだけな?