疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第240話 無限大なああああああ

 一曲目の熱狂が冷めやらぬまま、アミはギターのチューニングを整え、客席を見渡してから再びマイクに口を寄せた。

 

『一緒に盛り上がってくださり、ありがとうございます! 二曲目は、きっとみなさんも一度は耳にしたことがあると思います』

 

 そう前置きしてから、彼女は一呼吸おいた。

 

『夢を信じて、一歩踏み出す勇気をくれる曲です。聴いてください――』

 

 歯切れのいいギターリフが鳴り響いた。

 同時に桃太郎のドラムでビートが刻まれ、喜屋武のベースが疾走感あるフレーズで絡みつく。イントロが流れた瞬間、観客からどよめきが上がった。

 

「マジかよ、神曲きた!」

「これ絶対盛り上がるやつだ!」

「結婚式のとき流れるやつだっけ?」

「それ、違うバラフライ」

 

 誰もが知っているアニメの初代主題歌。

 世代を超えて歌い継がれる名曲の力は絶大で、校庭の空気が一気に「待ってました!」という熱に包まれる。

 

『ゴキゲンな蝶になって~♪ きらめく風に乗って~♪ 今すぐ君に会いに行こう~♪』

 

 アミの歌声が空へと突き抜けた。

 優しくも芯のある声が、この曲特有の高揚感と切なさを乗せて広がっていく。

 サビに入ると、観客は一斉に腕を突き上げる。

 

『何が WOW WOW~♪』

 

 アミの歌に合わせ、自然と口ずさむ者も多い。

 オタクだろうが一般生徒だろうが関係ない。誰もが知っているからこそ、会場は一体感に飲み込まれていった。

 桃太郎のドラムは、原曲の勢いを保ちながらも少しアレンジを効かせ、タム回しでアクセントを加える。

 彼女の長身から繰り出される迫力あるドラムは、音圧だけで観客を圧倒するほどだ。

 喜屋武はリズムに合わせてステージを横に動き回る。

 

『きっと飛べるさ~♪ On My Love~♪』

 

 アミは必死にマイクへ声を届けながらも、観客の反応を見逃さない。

 目を合わせ、笑顔を返すたびに、熱気はさらに膨れ上がっていった。

 やがて間奏。

 アミのギターが一段と歪みを増し、鳴り響く。

 その瞬間、喜屋武が前に飛び出した。

 

『みんな、声出せるかー!』

 

 ベースを低く構えながら、拳を掲げる。

 

『いくよ! あい! あい!』

 

 観客の拳が一斉に突き上がる。

 

「あい! あい!」

 

 地鳴りのようなコールが校庭を揺らす。

 そして、クライマックス。

 ラスサビ前のギターソロに突入した。

 

 アミの指が指板を駆け抜ける。

 鮮やかで情熱的なフレーズが夜空を切り裂くように響き渡る。

 ここまで安定していた彼女の歌とコード弾きから一転、ギタリストとしての力量を見せつける瞬間だ。

 

『おぉぉぉ――っ!』

 

 観客がどよめき、拳を突き上げる。

 喜屋武はその熱をさらに煽り、ステージから客席へ向かって叫ぶ。

 

『ラストいくさーっ! もっと声出して!』

 

 再び拳が突き上がり、コールが重なる。

 そしてアミが最後のサビに入った。

 

『無限大な~夢のあとの~♪ 何もない世の中じゃ~♪ そうさ愛しい~♪ 想いも負けそうになるけど♪』

 

 魂が震えるような全力。

 未来を信じる言葉を、胸の奥から吐き出すように歌い上げる。

 観客は完全に心を奪われていた。

 

 オタクも一般生徒も、男子も女子も関係ない。

 この曲の普遍的な力と、アミの歌声とギターの技量の説得力が、すべてをひとつにしていた。

 ラスサビを駆け抜け、最後のフレーズを伸ばす。

 

 アミがギターをジャーンと鳴らし切り、桃太郎がシンバルを打ち鳴らした瞬間。音が校庭から弾け飛んだ。

 数秒の静寂。爆発するような大歓声が沸き起こる。

 

「最高っ!」

「Named Monster!」

「ありがとうーっ!」

 

 アミは肩で息をしながら、深く一礼した。

 

『ありがとうございます! やっぱり、文化祭はこうじゃないと、ですね!』

 

 その言葉に、再び大きな拍手と歓声が巻き起こった。

 二曲目にして、完全に会場を掌握した。

 選曲の妙と、曲そのものの力。

 

 それを〝本物の熱〟に変えたのは、やっぱり彼女たち自身の演奏だった。

 

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