疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第245話 ラブコメはまだまだこれから

 疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す。

 それは現実世界で北大路魚瀧という無名の作家が魂を込めて書き上げた作品だ。

 

 その作品は、タイムリープしたと見せかけて実は自分が書いた現実ベースの作品の世界へ転生した鈍感な主人公と幼馴染がやり直すという物語だ。

 ラブコメらしい都合を反映させたことで、主人公はモデルとなった作者本人より遥かに鈍感な人物になってしまっている。

 その主人公へ転生したのだ。世界の修正力は彼の恋愛感情を許さない。

 

「ダメだよ、北大路先生。ラブコメ主人公がヒロインとくっつくのはずっと先さ」

 

 指を鳴らせば、彼の恋愛感情はリセットされる。

 

「痛ぁ!? おっそろしいな、あの負けヒロイン……」

 

 一時的に弾かれてこちらにもフィードバックが来てしまった。

 佐藤愛美麗。やはり彼女はこの世界におけるイレギュラーだ。

 

 それも仕方ない。彼の作った物語の役割に当てはまる存在がたまたま彼の推しだったのだ。

 本来なら、舞台装置の一つに過ぎないはずだったというのに。

 

「安心しなよ、北大路先生。あなたの物語は、まだ終わらない」

 

 彼女だけじゃない。皆、本来の現実世界とは違う道を歩んでいる。

 佐藤由紀、喜屋武鳴久、田中騎志、斎藤隆盛。

 彼らは慶明高校にいなかった存在だ。

 この新たに出来た世界で田中奏太の影響を受けて運命が変わり始めた。

 

 佐藤由紀は、バスケ以外にも夢中になれるものを見つけることができた。

 佐藤愛美麗は、輝かしい高校生活を送りながら音楽の道を歩んでいる。

 喜屋武鳴久は、図らずも過去の過ちを清算することができた。

 田中騎志は、未来の妻と義兄に早めに出会い、幼馴染の呪縛からも解放された。

 斎藤隆盛は、その苦難に満ちた未来から逸れることができた。

 

「しっかし、ここから先はどうするかねぇ」

 

 元々この世界は田中奏太の中学卒業を始点に分岐して生まれた並行世界だ。

 彼がやり直したいと強く願い、その衝動で書き上げた物語が現実を侵食し世界は分裂した。

 今や田中奏太の影響で、複数のキャラクターが予定外の幸福を手に入れ始めている。

 これは良い兆しなのか、それとも物語の破綻の前触れか。

 

 ……まったく、困ったものだ。

 

 本来のラブコメは一本道。

 主人公と正ヒロインが紆余曲折を経て結ばれる、その道筋こそが読者の期待であり、お約束だ。

 

「北大路先生……あなたは本当に罪深い人だね」

 

 無意識のうちに、自分の望んだやり直しを登場人物たちへ投影してしまった。

 その願いは、作中世界に新しい可能性をもたらす一方で、決して触れてはならない均衡を崩しかけている。

 

「続きがどうなるか……見せてもらおうじゃないか」

 

 物語はまだ終わらない。

 むしろ、ここからが本当の試練であり、選択の始まりなのだから。

 

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