疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第246話 代償

 布団に潜り込んでも、眠気なんてこれっぽっちも訪れなかった。

 目を閉じれば、夕暮れの屋上が鮮やかに蘇る。

 

『……私、カナタ君のことが好きです』

 

 アミの真っ直ぐな瞳。あの声。

 好きですの一言が、何度も脳内で反響する。

 

「……俺、なんで断ったんだ?」

 

 思わず呟きが漏れる。

 推しだぞ。未来の俺を救ってくれた存在だ。

 彼女の歌声がなかったら、俺はとっくに小説家を諦めていた。

 そんな相手からの告白。普通なら舞い上がるしかないだろう。

 

 それなのに俺は、彼女の想いに応えることはできなかった。

 驚きはある。けれど、後悔はない。

 その矛盾に自分自身が一番困惑していた。

 

「……なんなんだよ、俺の気持ち」

 

 胸に手を当ててみても、答えは見つからない。

 アミを大切だと思うのは間違いない。それと同時にアミに恋することはないとも感じた。

 彼女の想いに応えられない苦しさは思い出せる。

 だけど、その理由がどうしても思い出せなかった。

 

「いや、違う」

 

 俺はヨシノリのことを気にしていたはずだ。

 何故、アミに告白されているのに幼馴染のヨシノリのことを気にするのか。

 

 それは多田野と桃太郎のことがあったからなのだろう。

 あの二人は幼馴染だったが、恋愛沙汰で距離が開いてしまった。

 原因は多田野が相手の気持ちを考えない自己中心的な演奏マシーンだったからだ。

 それを見て、執筆マシーンと言われる俺も他人事ではないと思ってしまったのだろう。

 

「……幼馴染か」

 

 布団を頭までかぶり、呻く。

 いろいろ自分の心理を分析してみたものの、本当は俺自身がまだ自分の気持ちを掴めていないだけなのかもしれない。

 どうにか答えを見つけようとすると、今度は別の悩みが押し寄せてくる。

 

 明日から、アミとどう顔を合わせればいいんだ?

 そのとき、俺はどんな顔をして挨拶すればいい?

 普通に「おはよう」でいいのか?

 それとも少し距離を置いた方がいいのか?

 いや、そんなことをしたら余計に傷つけるんじゃないか?

 

「ああ、もうクソッ!」

 

 悩みが渦巻き、胸が締めつけられる。

 アミは涙をこらえて笑っていた。あの笑顔が何度も浮かんでは消える。

 思い出すたびに胸が痛むのに、同時に温かさも残る。

 告白してくれたことは、やっぱり嬉しかった。

 たとえ応えられなかったとしても、その気持ちは確かに俺を救ってくれたのだ。

 

「どうすっかなぁ」

 

 眠れない夜は、まだ続く。

 結局俺は、このもやもやごと抱えたまま、俺は明日を迎えるしかなかった。

 

 そして、次の日の朝。

 寝ている間に、抱えていたもやもやはどこかへ吹き飛んでおり、すっきりとした朝を迎えることができた。

 

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