疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
翌日の朝。
教室はざわざわとした空気に包まれていた。文化祭が終わった直後だからか、全体的にどこか緩んでいるのだろう。
俺は席に座りながら、昨日の焼肉のことを思い返していた。
肉を頬張って豪快に笑っていたゴワス。けれど最後に見せた、あの曇った顔。
それが頭にこびりついて、つい俺も将来のことについて考えてしまっていた。
「……どうすっかなぁ」
視線を前にやれば、アミと喜屋武が楽しそうにおしゃべりしている。
あの夕暮れの屋上で、アミの告白を断ったばかりだというのに、彼女は昨日までと同じように笑っていた。
その無邪気さに救われる反面、どうしても胸の奥に気まずさが残ってしまう。
彼女の笑顔を見るたびに、断ったときの震える声と、夕焼けに滲んだ顔が蘇ってくる。
だが、俺の選択は仕方のないものだった。
俺は幼馴染としてヨシノリの隣にいることを選んだのだ。アミと付き合えば、待っているのは多田野と桃太郎のような結末だっただろう。
「ん?」
自分の選択に対して違和感を覚えた。
幼馴染として、だったよな?
何か大切なことが抜け落ちているような気がするが、その違和感はすぐに霧散していく。
まあ、いいか。俺がアミの気持ちに答えられないのは変わりない。
彼女は推しであって、ガチ恋相手ではないのだから。
そうやって自分の気持ちに折り合いをつけながら俺は、二人に声をかけた。
「アミ、喜屋武。ちょっといいか」
二人が同時にこちらを振り返る。アミは小首を傾げ、喜屋武はきょとんと目を丸くしていた。
「将来のことって、考えてたりするか?」
「どうしたんですか突然?」
「プロのカナタンが何を気にするね?」
質問が唐突だったせいか、二人とも怪訝な表情を浮かべていた。
「いや、ある意味将来が決まったからこそみんなはどうするのか気になってな」
一拍の沈黙のあと、アミがぱっと笑顔を浮かべる。
「私は、やっぱり音楽で食べていきたいです。文化祭ライブで、強くそう思いました」
真っ直ぐな瞳。迷いのない声。
その姿は、あの告白のときと同じくらいに本気で。
だからこそ俺は、返事を断った気まずさをまた感じてしまった。
「その先のことはどうするんだ?」
「正直、そこまでは考えてないです。今はただ、ギター弾いて歌うのが楽しくて仕方ないので」
アミらしい答えだった。
「わんも同じやさ!」
隣で腕を組んでいた喜屋武が、待ってましたと言わんばかりに声を上げる。
「音楽やって、ライブして、みんなでワイワイできたらそれで幸せ! 先のことは……まあ、なんくるないさー!」
無邪気に笑う喜屋武。その明るさに、教室の空気まで少し和らいだ気がした。
「そっか……」
俺は小さく息を吐いた。
二人の答えは、あまりにも〝今〟に全力を注いでいた。未来の不安なんて考えず、目の前の音楽に全てを賭ける姿勢。
それはきっと無謀かもしれないが、それゆえに眩しすぎるほどに輝いて見えた。