疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
放課後。
文化祭の片づけでざわついていた校舎も、夕暮れにはすっかり落ち着きを取り戻していた。
俺は鞄を肩に掛け、漫研の部室へと足を向ける。
アミや喜屋武は、今が楽しいと笑っていた。
他のみんなはどう考えているのだろうか。
この二周目の高校生活で俺はいろんな人の人生に深く関わった。
だからこそ、俺はみんなの将来がどうなるか気になっていたのだ。
扉を開けると、部室の中ではいつも通り机に原稿やコピー本が散らかっていた。
トト先はGペンを走らせ、ケイコ先輩も液タブの上で一心不乱にペンを動かしていた。
二人とも、文化祭直後だというのに、疲れを感じさせない集中ぶりだった。
「カナぴ。お疲れ」
トト先が顔を上げる。
「おっぱいギターちゃんのステージ、見た。すごかった」
「最高のステージだったね。さすがは我らが部誌の主人公」
ケイコ先輩も口元をほころばせ、作業の手を休めた。
「ええ、本当にね」
俺は適当に返しつつ、机の端に鞄を置いた。
少しの沈黙のあと、口を開く。
「先輩たちは、将来のことってどう考えてます?」
その一言で、部室の空気が変わった。
ケイコ先輩がペンを置き、トト先も手を止めてこちらを見てくる。
二人の瞳には一切、迷いの色がなかった。
「私は、漫画で食べてくつもりだよ。お父さんみたいに専業でね」
ケイコ先輩の声は胸を張って答えた。
かつては身近にいた天才に圧し潰され、筆を折った彼女。
二周目の今、再び立ち上がった彼女は、もう逃げてはいなかった。
その瞳は未来をまっすぐに見据えていた。
「でも、大学には内部推薦で進むつもり。卒業までの時間で、実績を積みながら準備するよ」
「自分も同じ」
トト先が軽く頷く。
「専業志望だけど、大学に行きながら連載を取りに行く。もち、イラストレーターと並行して」
トト先の口調はいつも通り淡々としていたが、その裏に確固たる自信があった。
二人の答えを聞いて、俺は静かに頷いた。
やっぱり先輩たちは違う。才能も、自信も、未来を形にする覚悟もある。
俺は文章媒体の限界を知っている。
ラノベ作家は単発でヒットを飛ばしても、一生安泰というわけじゃない。
だからこそ、俺は兼業という道を選ぶ。
大学に行って、就職して、作家活動は副業として続ける。
未来の自分がどうなったかを知っているからこそ、道はもう決まっている。
「やっぱり先輩たちはすごいですね」
媒体は違えど、堂々と専業で食っていくと口にできる二人を俺は羨ましく思った。
「んー? そうかな」
ケイコ先輩は笑って肩をすくめる。
「カナタ君だって、もう作家デビューしてるでしょ」
「高校生作家とか、普通にバグ」
トト先も素直にそう口にした。
「いや、俺なんてまだまだですよ。正直、運もありましたから」
俺の返答に対し、ケイコ先輩が首を振る。
「運だって実力のうち。デビューできない人がどれだけいると思ってるの。チャンスを掴んだ時点で、君はもう一歩前に出てるんだよ」
トト先も頷いて続ける。
「兼業って選択、悪くないと思う。安定と夢の両立。合理的」
「そう、ですかね?」
「そう。自分にはできない。だから、ちょっと羨ましい」
羨ましい、か。
専業で食っていこうとする二人から、そんな言葉が出るとは思わなかった。
「……ありがとうございます」
俺は素直に頭を下げた。
文化祭の余韻がまだ残る部室で、俺たちはそれぞれの未来を語り合った。
この時間が、俺にとって何よりの答えになった気がした。