疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第256話 附属高校の恒例行事

 朝からどこか教室は緩んだ空気に包まれていた。

 俺たちのクラスは文化祭の優秀賞を取り、クラスから男女でミスター&ミスコンテストで優勝者も出た。

 それにアミたちのライブも最高に盛り上がった。

 文化祭気分に浸ったままでいたい気持ちもわかる。

 

 背面黒板の隅にはまだ〝文化祭お疲れ様!〟と誰かが書いた落書きが残っていて、窓際のグループは机を寄せて文化祭の打ち上げの話で盛り上がっている。

 二次会、三次会といつまで文化祭に囚われているんだ、こいつらは。

 今を楽しむという意味ではちゃんと青春しているのかもしれないが。

 そんな考えに沈んでいたとき、教壇の方から声が飛んだ。

 

「はいはい、静かにー。今日は大事な連絡があるぞ」

 

 担任の長谷川先生だ。

 先生の声を合図に、ざわついていた教室がすこしずつ落ち着いていく。

 

「みんなも知ってるとは思うが、うちの高校は慶明大学の付属高校だ。それで一年の内から大学見学を行うことになってる」

 

 附属高校恒例の大学見学だ。

 高二になったらオープンキャンパスもあるし、やたらと付属校って見学行かされるんだよな。

 まあ、歩いてすぐのところにあるのも大きいのだろうが。

 

「見学とかダル」

「まあ、授業ないからいいじゃん」

「レポート書かされるのかぁ」

 

 まだ一年生の秋。大学なんて遠い話だと思っていた生徒が多いのだろう。

 顔を見合わせる者、ため息を漏らす者がいた。隣の席のヨシノリも浮かない顔をしている。

 

「班ごとにわかれて回ってもらうことになるが、班は自由に組んで構わない。ただし五人か六人で一班だ」

 

 先生はプリントを配りながら言葉を続ける。

 

「来年には内部進学クラス、他大理系コース、他大文系コースにクラスも別れる。早いうちから雰囲気を知っておくに越したことはないだろう。キャンパス内を歩いて、少しでも〝将来〟を想像してほしい」

 

 その言葉を聞いた瞬間、心臓が小さく脈打った。

 どうにも最近、将来というワードに敏感になっている気がする。

 配られたプリントを手に取ると、各学科を回る。

 

 まさか、高校生になった俺が、卒業した経験のある大学を入学前に見学することになるとは。

 俺は文学部出身だけど、特に大学で苦労した経験はない。友達がいなくても、ちゃんと授業を聞いていれば落単することもなかったし。

 

 それに授業自体も結構楽しかった。

 文化人類学は先生もユニークで、内容がするする頭に入ってきたことも大きいだろう。

 

「カナタ、どうする?」

 

 隣のヨシノリが、のぞき込むように声をかけてきた。

 

「いつメンで固まればいいんじゃないか?」

「だよね」

 

 その会話を聞きつけたのか、ヨシノリの後ろの席にいたアミが会話に入ってくる。

 

「私もその方がいいです。どうせだったら、みんなで一緒に回りたいです」

 

 その笑顔は相変わらず柔らかく、文化祭の告白を思い出して胸が軋んだが、彼女はいつも通りの調子で笑っていた。

 

「わんも賛成さー! 見学なんて絶対退屈だし、気心知れた仲間で行った方が絶対楽しいって!」

 

 喜屋武が元気よく手を挙げ、机をバンバン叩いて賛同を表す。

 その声にナイトも笑顔で頷いた。

 

「気心知れた顔ぶれで回った方が気が楽だしね」

 

 最後に、窓際でプリントを眺めていたゴワスが、少し遅れて口を開いた。

 

「……じゃあ、俺もそれで」

 

 こうして、いつものメンバーで班が固まった。

 クラスのあちこちでは、別のグループが声を掛け合って班を決めている。

 部活仲間で固まる奴ら、成績上位組でまとまろうとする奴ら、なんとなく近い席で集まる奴ら。

 そんな中、俺たち一番乗りで班が決まった。

 

「よし、決まりだな」

 

 提出する半決めのプリントに六人全員の名前を記載して、ふと視線を横に滑らせる。

 ゴワスはやっぱり浮かない顔をしていた。

 焦るのは仕方ないかもしれないが、将来のことなんて大学に入っても碌に考えていない奴のほうが多い。

 俺なんて就活の最中ですら将来のことなんて考えていなかった。

 完全週休二日制でパソコン使う仕事なら何でも良かったし。

 

「班が決まったら、代表者は放課後に名簿を提出しろよー。じゃあ、今日の連絡は以上だ」

 

 その言葉でホームルームが終わり、教室は一気にざわつきを取り戻した。椅子が引かれる音、笑い声、机を動かす音が響く。

 今回の件で、ゴワスの不安が少しでも解消されればいいのだが。

 

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