疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
その週の土曜日
俺は小さな紙袋を手に提げ、住宅街の細い路地を歩いていた。
袋の中身は焼き菓子の詰め合わせだ。
これは商店街にある老舗の洋菓子屋で買った。
包装紙はシンプルで、リボンは落ち着いた紺色。上品だけど気取りすぎない感じで、いかにもきちんとした手土産という雰囲気がある。
この店を選んだのには理由があった。一周目で上司だったリリさんが、気に入っていた店だ。手土産ならこれで間違いないだろう。
「……二周目になっても世話になりっぱなしだな」
苦笑しながら袋を握り直す。
二周目で俺がある程度うまくやれているのも、リリさんが根気よく社会不適合者の俺と向き合い続けてくれたからだ。
部下の教育は上司の仕事なんてよく言ってはいたが、俺が小説家を目指していることを知ってからは応援もしてくれていた。
あんなに出来た上司もなかなかいないだろう。
「っと、この辺だったよな」
住宅街の角を曲がると、目的の家が見えてきた。
二階建ての一軒家で、白い外壁はやや年季を感じさせるものの清潔感がある。
ベランダには洗濯物が揺れ、庭には自転車が二台並んでいた。ゴワスが使っているのは多分奥の大きなやつだ。
見た目はごく普通の家庭。玄関の周りは小さな鉢植えで飾られていて、細やかな気配りを感じた。
「母親の趣味か?」
きちんと整えられた玄関先に立つと、余計に背筋が伸びる。
ポケットからスマホを取り出し、メッセージを送ろうか迷ったが、直接ピンポンを鳴らすことにした。こういうのは礼儀だ。
呼吸を整え、インターホンを押す。
「はーい」
一瞬の沈黙のあと、女性の声が返ってきた。
落ち着いた、けれど柔らかさを含んだ声。
その声を聞いた瞬間、どこか懐かしい気持ちになった。
鍵が開く音がしてからドアが開く。
そこに現れたのは、肩口で切り揃えた黒髪に、ウェリントン型のメガネの女性。
知的で大人の落ち着きを纏ったその姿には見覚えしかなかった。
「……っ」
息が止まった。
目の前に立っていたのは、紛れもなく一周目で俺の直属の上司だったリリさんこと――
落ち着いた視線。
理路整然と物事を進め、時に冷たく感じるほど厳しいのに、裏ではしっかりフォローしてくれていたあの人。
会議室で何度も数字を突き付けられ、喫煙所で先輩に「庇ってくれてるんだぞ」と聞かされた記憶が鮮明に蘇る。
「……え?」
頭が真っ白になる。
なんで、ここに。いや、ここはゴワスの家で……どういうことだ?
「こんにちは。隆盛の姉の斎藤梨利子です」
彼女は穏やかに微笑んだ。
「あなたが隆盛の友達の奏太君? いつも弟と仲良くしてくれてありがとう」
その瞬間、点と点が線で結ばれる。
ゴワスの姉は一周目の上司であるリリさんだったのだ。