疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第262話 コスプレイヤー芳野リサト

 帰り道。

 今日もヨシノリはジャージ姿のままで一緒に帰ってくれていた。

 部活終わりの汗の匂いも本人は気にした様子もなく、隣を歩いてくれている。

 

「それにしても、ヨシノリが自作コス作ってるとはなぁ」

「カミラのキャラデザはもう発表されてたからね。ケイコ先輩に相談したら三面図ももらえちゃったから、相談して良かったよ」

「三面図って、あの前後左右描いたやつか」

「そうそう。あれがあれば形が取りやすいんだよ。最初は既製品を改造しようかと思ったけど……どうせなら一から作りたいじゃん?」

 

 ヨシノリは得意げに胸を張る。ジャージ姿でも、その笑顔だけは妙に華やかだった。

 

「でも、お前裁縫とかできたっけ。小学校の家庭科でも八割くらい先生にやってもらってたろ」

 

 ドラゴンの裁縫セットでドラゴン柄のエプロンを作っていたのは、今でも思い出せる。

 小学校のときのヨシノリって、本当に男子より男子だった気がする。

 

「いつの話してんのよ。こう見えて、料理も裁縫も一通りできるんだけど?」

「マジかよ……」

 

 再会してからもこれだけ一緒にいたのに、まるで知らなかった。

 作るより食べているイメージが強かったこともあり、家事をやっているヨシノリはいまいち想像できなかった。

 

「それにコスプレに関しては、コミケきっかけでハマっちゃってさ。何人かレイヤーさんとも仲良くなったんだ。ほら」

 

 ヨシノリは楽しそうに自分のスマホでSNSのアカウントを見せてくる。

 

「芳野リサト……これって、コスネームか?」

「うん。由来は言わなくてもわかるよね」

「ヨシノリ・サトウ、よしの・りさと、ってとこだろ?」

「さすが小説家」

 

 いつの間にこんな活動を……って、おい。

 

「おまっ、フォロワー一万人って、マジかこれ!?」

「あー、写真とか載せてたらいい感じに伸びちゃって」

「うおっ」

 

 画面をスクロールしてみれば、そこにはコスプレをしたヨシノリの写真が載っていた。いいねもたくさんついている。

 

「まあ、全部が自作ってわけでもないんだけどね」

 

 そういえば、最近土日に部屋に来ないと思ったらコスイベに参加していたのか。

 部活に打ち込みながら、その合間にイベントに参加するなんて普通できることじゃない。

 

「にしても、独学でよくここまで……」

「ああ、独学じゃないよ。ほら、手芸部の友達がコス界隈の人でさ」

「なるほど、あのレベルのコス作れる」

 

 そういえば、手芸部の人にはコミケでも世話になった。

 まさか、ひっそりと弟子入りしていたとは。

 苦笑しつつも、胸の奥が少しだけ温かくなる。

 ヨシノリも何だかんだ自分のやりたいことをやっていたのだ。

 

「でもさ……」

 

 ヨシノリが急に声を落とした。

 

「本気でそういうのやろうとすると、あんまりいい顔されないんだよね。別にコスプレは好きだけどさ」

 

 横顔には、いつもの明るさが少し影を潜めていた。普段は見せない弱音だ。

 

「だからさ、みんなには内緒にしておいて」

 

 最後には無理やり笑顔を取り繕う。その強がりが、逆に痛々しく見えた。

 

「お前は何を言ってるんだ」

「へ?」

 

「やりたいことをやって、それを貫いて仕事にした人間がここにいるだろうが」

「あ……」

 

 まったく、何を悩んでいるのかと思えば。

 まあ、ヨシノリは俺たち以外にも女子のコミュニティにも所属していたから、その辺は俺たち以上に気にしてしまうのだろう。

 

「本気でやりたいことをやってる奴を笑う奴なんて程度が知れてる。少なくとも、俺たちはそんな人間じゃないことくらいわかるだろうに」

「それはそうなんだけど……」

「趣味だろうと本気だろうと、やりたいならやればいいだろ。ヨシノリが本気で作ったものは、ちゃんと人を惹きつけてるんだ――もちろん、俺もな」

 

 その言葉に、ヨシノリは頬を赤らめ、口をもごもごさせながら視線を逸らした。

 

「……そういうことさらっと言うなっつーの」

 

 耳まで真っ赤にして、ジャージのポケットに手を突っ込む姿がなんだか子どもみたいで、つい笑ってしまった。

 

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