疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
通話口から不機嫌そうな声が聞こえてきて連絡が取れたことはわかったが、まさかブロックされていないとは思わなかった。
『用件は? あたし忙しいんだけど』
「いや、まあ……ちょっと紹介したい人がいて」
『紹介? ……ふん、聞くだけきいたげる』
声色は不機嫌そのものだが、興味はあるらしい。
ヨシノリが画面を操作すると、通話がビデオ通話に切り替わった。
瞬間、画面越しに姫乃の顔が映る。
相変わらずの見た目だけはいい。長い髪をラフに束ね、部屋着姿でも妙に華がある。
「あたしの幼馴染で平井麗一っていう女たらしでクズのイケメンがいるんだけど、女の子紹介してくれってカナタがせがまれちゃって」
『ハッ、あんたの幼馴染っていえば、あのもやし野郎でしょ? 肉団子基準じゃ期待はできなさそうね』
「ほら、平井」
「どうも、はじめまして」
『っ!?』
姫乃の視線は真っ直ぐに平井へ突き刺さる。
その目に宿るのは人を値踏みする冷ややかさだった。
髪をかき上げ、どこか気取った笑みを浮かべる平井の顔を見た瞬間、彼女の態度ががらりと変わった。
「ども、平井麗一っす。麗しく一番って書いて、れいいちっす」
『おほー……』
ビデオ通話越しに姫乃の間抜けた声が聞こえる。
『採用採用! 即採用!』
さっきまでの不機嫌さが嘘のように、姫乃の目が輝いていた。
「女たらしのクズでも大丈夫そうか?」
「……こいつの女たらしは苦労するぞ」
シューヤが心配そうに尋ね、キクりんも呆れたように腕を組んだ。
『別に女たらしでもよくない?』
「えっ、マジで?」
平井が目を丸くするが、姫乃はむしろ楽しそうに身を乗り出す。
『いやだって、見るからにそんな顔してるじゃん。イケメンで軽そうで、絶対女遊びしてるでしょ』
「そりゃ、まあ、刺されそうになるくらいには遊んでるけど」
『ほら、やっぱり!』
姫乃が嬉しそうに手を叩いた。普通ならドン引きされるところを、むしろ好意的に受け止めている。嫌な予感しかしない。
『全然いいよ。むしろ、私の彼氏でいてくれるならナンパとか遊びとかしてもぜーんぜんOK!』
「……は?」
ヨシノリの顔が固まった。俺も耳を疑った。
普通の感覚なら意味不明な発言にしか聞こえない。
『だってさ、女たらしってことはめちゃくちゃモテるってことじゃん。むしろ優越感? こんなイケメンでモテてる彼氏がいる私の株も上がるんだからさ』
スマホ越しにウィンクを飛ばす姫乃。どこまでも他者に対してマウントを取ろうとする思考回路に、俺たちはそろって沈黙した。
「マジかよ……!」
逆に平井のほうが感極まっていた。目を潤ませ、両手を握りしめている。
「俺のこと理解してくれる女子、初めてだ……最高だわ、姫乃ちゃん!」
『でしょ? やっぱ見る目あるじゃん、私』
姫乃は勝ち誇ったように笑い、平井は画面に向かって必死に手を振る。その様子に、シューヤが腹を抱えて転げ回った。
「クズ同士お似合いすぎだろ! あっははははっ! 腹いてぇ……! いやほんと、こりゃ奇跡のマッチングだわ!」
シューヤが爆笑し、平井が狂喜乱舞している。
「……信じらんない」
「やれやれだな……」
「マイナスとマイナスをかけるとプラスになるとは言うけど、なってるのかこれ」
ヨシノリは呆れ顔で頭を抱え、キクりんは黙って空を仰ぎ、俺も深いため息をついた。
まあ、これでナイトの安全を確保できたと考えれば、安い物だろう。