疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第267話 本気でやりたいことにオールイン

 最近、ヨシノリの様子がおかしい。

 放課後一緒に帰っていても、どこか元気がないし、食事の量も目に見えて減っている。

 以前なら大盛りのご飯を何度かおかわりしていたのに、今は茶碗一杯で終わらせるくらいだ。

 しかも化粧で隠してはいるものの、目の下には薄くクマが浮かんでいる。

 ムチムチだった体つきも、ほんのわずかだが細くなったように見えた。

 

 どう見ても、ただ事じゃない。

 

 そのことが頭から離れないまま、俺は漫研の部室でパソコンの画面と向き合っていた。

 机の上には誰かが持ち込んだスナック菓子の袋やジュースの缶が散らかり、漫画本の山が積まれている。

 ペンを走らせる音や雑誌をめくる音があちこちから聞こえてきて、いつもの気楽な空気が漂っていた。

 みんな思い思いに漫画を読んたり、くだらないことで笑い合ったりしている。

 

 漫画を描いている人間がトト先とケイコ先輩しかいないのもいつも通りだ。

 

「田中君。珍しく手が止まってるけど、心配事?」

 

 声をかけてきたのはケイコ先輩だった。

 糖分補給とばかりにチョコレートを食べていた彼女は、すぐに俺の様子に気づいたらしい。

 

「ちょっと、ヨシノリが元気なさそうで心配なんですよね」

「由紀ちゃんかぁ……女バスとうちとの掛け持ちが辛い感じ?」

「そういうわけでもないと思いますけど」

 

 漫研は活動日自由を謳っていることもあって、ヨシノリはあんまり顔を出さない。だから先輩が言うように部活との掛け持ちが原因というより、たぶん別の理由だ。

 俺の頭に浮かんでいるのは、あいつが最近夢中になっているコスプレのことだった。

 おそらく、コスプレのほうが忙しいのだろう。

 

「まあ、あいつもやりたいことに本気で打ち込んでいるんですよ」

 

 本気でやりたいことにオールインする姿は応援したくなる。

 かつて俺は夢のために死ぬ気で執筆活動をした。

 それも全て小説家になるという夢を叶えるためだ。

 

 結局、二周目という幸運があったおかげで、俺は夢のスタートラインへ立つことができた。

 俺にとっての小説は、ヨシノリにとってのコスプレだったのだろう。

 

 結果が出るまでやるのが努力だ。

 だから、ヨシノリも何かしらの結果を掴んでほしいと思う。

 

「先輩、消しゴムなくしちゃったんですけどー!」

「おい、こぼすなよ! 机ベタベタだって!」

 

 部室のあちこちで後輩たちが賑やかに声を上げ、笑い声が響く。

 そんなまったりとした時間は唐突に終わりを告げる。

 

「奏太、大変だ!」

 

 勢いよく扉が開き、ジャージ姿のゴワスが飛び込んできた。肩で荒く息をし、額には汗が浮かんでいる。

 その表情は、普段の呑気な彼からは想像もつかないほど切迫していた。

 

「由紀が倒れた!」

「はぁ!?」

 

 思っても見なかった一報に、椅子を蹴るように立ち上がった。周囲の部員たちも一斉に顔を上げ、ざわめきが広がる。

 ゴワスは額の汗を拭いながら、切羽詰まった声で続けた。

 

「体育館で急に倒れて今、保健室に寝かされてる!」

「……っ、すぐ行く!」

 

 心臓を鷲掴みにされたような感覚のまま、俺はゴワスの言葉も聞き終わらぬうちに部室を飛び出していた。

 

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