疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第273話 現実感のない現実の話

 ゴワスはプロゲーマーという言葉に現実感がなかったからか、呆然とポテトをもしゃもしゃ食べていた。

 俺はポテトを口に放り込みながら軽く息を吐く。

 

「実際にいるぞ。ゲームで飯を食ってる人間は」

「……マジで?」

「大会の賞金で生活してる奴がいるし、スポンサーがついて活動してる奴もいる。それがプロゲーマーって呼ばれる連中だ」

 

 ゴワスの目がわずかに輝いた。

 

「でも、それ日本じゃ無理だろ」

「日本でもプロゲーマーって存在はどんどんでかくなってる。イベントも増えてるし、可能性はある」

 

 実際、2012年の今でさえ大会やイベントは増えつつある。

 ただ職業として成立するかという点では、まだまだ世間の認識は追いついていない。

 

 未来を知っている俺にはわかる。数年もすれば配信界隈は爆発的に盛り上がり、ゲーマーが立派な職業として受け入れられる日が来る。

 もちろん、それは心の中だけに留めておいた。

 

「だから、やる価値はあるんだよ」

 

 ゴワスは腕を組んで考え込む。

 ナイトが横から口を挟む。

 

「ゴワスは普段からコンボ動画とかチェックしてるし、システムの研究もしてるんだ。語り出すと止まらないくらいだしね」

 

 ゴワスの言葉が詰まる。やがて、ぽつりと。

 

「でも、こんなの……夢って言えるのかよ。お前らはちゃんと目指してるものがあるじゃん。カナタは作家で、ナイトは大学ってビジョンがあって。ヨシノリやアミだって……俺だけガキみたいにゲームやってるだけで」

 

 俺は即座に遮った。

 

「バカ言え。夢にガキっぽいも大人っぽいもないだろ。やりたいことがあるだけで、十分だ」

「高校生作家が言うと説得力があるね」

 

 ナイトがメロンソーダを飲みながら苦笑する。

 

「それにお前、ただ遊んでるだけじゃないだろ」

 

 俺は少し笑って肩をすくめる。

 

「今日見てた感じでも思ったけど、お前の集中力とか反応速度はすごい。対戦の読み合いも得意だろ。好きなことに本気で打ち込むなら、それだって立派な仕事だ」

「ゲームを遊ぶことが仕事になるのか?」

 

 戸惑う声で繰り返す。ナイトも微笑んで頷いた。

 

「僕もそう思う。さっきゴワスが語っていたとき、すごく楽しそうだった。ああいう顔で打ち込めるなら、夢にしていいんじゃないかな」

「プロになれるかどうかは別として、なりたいって思った時点で、もうスタートしてるんだよ」

「……二人とも」

 

 ゴワスはストローを弄りながら俯いたが、その頬はわずかに緩んでいた。

 

「だけど、ただ上手いだけじゃダメなんだろ?」

「その通りだ」

 

 俺はグラスの水をひと口飲み、ゴワスに向き直った。

 

「上手い奴なんて腐るほどいる。だけど人を惹きつけるのは〝そいつの物語〟だ。どう努力してきたか、どんな思いでやってるか。そこに共感や熱を感じて、みんな応援したくなるんだ」

「……物語、ね」

 

 ゴワスは小さく繰り返し、真剣に噛み締めるように呟いた。

 

「そう。俺は作家だからわかる。技術だけじゃ届かない。心を動かすものがなきゃ人はついてこない」

 

 俺は笑みを浮かべ、テーブルを軽く叩く。

 

「だから――プロゲーマー〝流星のゴワス〟の物語を書くぞ!」

「なっ……!」

 

 ゴワスの目が大きく見開かれる。

 ナイトは吹き出しそうになりながらも、どこか嬉しそうに笑っていた。

 突拍子もない話だったが、ゴワスの顔には確かな熱が宿っていた。

 

 たった今、ゴワスの未来がほんの少し動き出した気がした。

 

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