疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
最後のチャイムが鳴った瞬間、教室中にどっとため息と歓声が入り混じった。
シャーペンを置く乾いた音、答案を集める教師の声に気の抜けた返事、そして「終わったぁ!」と叫んで立ち上がる奴までいる。
誰かが机をバンバン叩いて笑い声を上げ、別の誰かは天を仰いで手を合わせていた。解放感と疲労感とで、空気そのものが熱を持っているように思える。
期末試験という長丁場の戦いが、ようやく幕を閉じたのだ。
「……燃え尽きた」
机に突っ伏し、白目を剥いているのはゴワスだった。腕を投げ出した姿勢のままピクリとも動かず、まるで受験戦争を終えた浪人生のような姿で呻いている。
「斎藤くん、大丈夫ですか……?」
アミが心配そうに覗き込むと、ゴワスは親指を震わせながら突き出した。
「わかんねぇけど……できた気がする……」
「なら大丈夫じゃん」
ヨシノリが笑いながら椅子を反転させ、机に頬杖をつく。淡い色のリップとマスカラ、トレードマークのオレンジ色のアイシャドウはきっちり整えているが、隠し切れない目の下のクマが試験期間の徹夜を物語っていた。それでも今はどこか晴れやかな顔をしている。
「あたしも徹夜で詰め込んだのはギリギリ役に立ったかな」
「このあと全部忘れるから意味ないだろ」
俺が突っ込むと、ヨシノリは小さく舌を出す。
「別にいいでしょ。大学に行っても使わないだろうし」
「それは科目によるだろ」
「とにかく、これで部活も遊びも解禁さー!」
喜屋武がサイダーを片手に笑う。机の上にはもう、こいつが持ち込んだチョコが転がっていて、完全に試験後の打ち上げモードだった。試験でぐったりしているやつらを横目に、誰よりも元気そうにしている。
「まあ……なんとか乗り切ったかな」
ナイトは落ち着いた声で答えた。答案を出し終えても眉一つ動かさず、淡々としている姿はさすがである。
「ゴワス。今回で夢に一歩近づいたと思えば、その疲労感も悪くないだろう?」
「……まあな」
ナイトの言葉にゴワスはしぶしぶ頷いた。乱れた髪をかきあげ、まだ息が荒いまま。
「土台作りってやつは大事、だからな」
ゴワスの口元はわずかに緩んでいた。疲労で真っ白な顔をしているのに、そこだけは充実した色が滲んでいる。
そんなゴワスの言葉に、アミは小さく笑みを漏らした。
「ふふっ、本気で頑張っているのって、なんだか素敵ですね」
「うん。カナタもあーちゃんも、鳴久もナイト君それぞれ先を見据えてる。斎藤も夢見つけたし……」
ヨシノリがちらりとこちらを見る。頬杖をついたままの横顔は、化粧の下に覗く疲労を隠せていなかったが、瞳だけは真っ直ぐだった。
「だったら、あたしももっと全力でやるしかないよね」
その言葉は強がりでも冗談でもなく、確かな決意を帯びていた。
試験が終わった安堵と、これから先の時間に対する期待感。
机を囲んだこの空間は、一瞬だけ未来を照らすステージのように感じられた。
俺たちはそれぞれの進む道を胸に抱きながら、同じ時間を共有して笑っていた。