疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第279話 大学見学

 冬休み明けを目前にした朝。

 吐く息が白く伸びる冷たい空の下、俺たちは神保町駅の改札を抜けた。

 駅前の通りには古本屋と喫茶店が並び、まだ開店準備中の看板からコーヒーの香りが漂ってくる。

 

 その坂を上る途中、街の向こうに見えてきたのは、淡いベージュの外壁を光らせながらそびえ立つ巨大な建物だった。

 慶明大学。俺たちの通う、慶明大学附属高校の本校だ。

 

「うわ、でっけぇ……」

 

 ゴワスが思わず声を漏らす。見上げた先にあるのは、冬の朝日を反射して輝く二十三階建ての本館タワー。

 無数の窓が規則正しく並び、アーチ状の屋上が青空を切り取っている。

 俺にとっては、随分と懐かしい光景だった。

 

「まぎー! ここが大学……!」

 

 喜屋武がマフラーの裾を押さえながら感嘆の声を上げる。

 

「うわぁ……写真で見るより全然でっかい」

 

 ヨシノリが息を呑んで見上げた。

 

「エレベーターで移動するタイプのキャンパスか。都会の大学って感じだね」

 

 ナイトが小さく頷きながら呟く。

 

「カナタ、こっち向いて~。せっかくだから集合写真撮ろ!」

「完全に観光客だな」

 

 俺は苦笑しながらカメラに収まり、みんなで並んでポーズを取った。

 慶明大学のキャンパスは思っていた以上に広かった。

 正門を抜けると、吹き抜けのロビーがあり、天井近くまで伸びたガラス越しに冬の光が降り注ぐ。

 

 大学生たちは慣れた足取りでエスカレーターを上り、手にはノートPCや教科書を抱えている。

 高校の空気とはまた違う。自由と責任が混ざり合った、大人の雰囲気がそこにはあった。

 まあ、大多数は社会に出たくないが故のモラトリアムのために通っているんだけども。

 

「集合場所どこだっけ?」

「十六階の教室だった気がする」

「案内が出てるよ」

 

 ナイトの言葉通り、エントランスのあちこちには〝慶明付属高校・大学見学会案内〟の掲示が設置されていた。

 ガラス壁の向こうでは職員が受付をしており、首からネームプレートを下げた学生スタッフたちがにこやかに案内している。

 

 俺たちの班は、俺、ヨシノリ、アミ、喜屋武、ナイト、ゴワスの六人。

 教室内には、まだ俺たちくらいしか来ておらず、担任の長谷川先生が退屈そうにあくびをしていた。

 

「おう、お前ら早いな」

「結構早く来たつもりだったんですけど、長谷川先生も大変ですね」

「まったくだ。まあ、授業やらなくていい分、こっちの方が楽……とも、言えないか」

 

 大学で問題起こされたら先生の責任になるもんな……教師は大変である。

 

「とりあえず、点呼だけ取っておくぞ」

 

 長谷川先生が出席表を片手に名簿を読み上げる。

 まだあまり生徒が来ていない教室は、冬の朝特有の張り詰めた静けさに包まれていた。

 窓の外では、巨大なビル群の間をすり抜けるように電車が走っていくのが見える。

 十六階から眺める景色は、まるで別世界のようだった。

 続々と他の班も到着し、教室は少しずつ賑やかになっていく。

 いつもの高校の教室よりも天井が高く、机も椅子も少し大きい。

 懐かしいはずなのに、それがやけに新鮮に感じられた。

 

「はい、それじゃあ全員揃ったな」

 

 長谷川先生が出席簿を閉じ、前に立った。

 

「今日の大学見学は、ここにいるほとんどが行くことになる慶明大学を実際に見てもらうためのものだ。施設見学に加えて、大学生から話を聞く時間もあるから、質問したいことがあれば積極的に聞いてくれ」

 

 先生の声が反響し、みんなが気の抜けた面持ちで頷く。

 それでもゴワスは椅子の背にもたれかかり、ぼそっと呟いた。

 

「……大学か。なんかまだ遠い話って感じだな」

「意外とあっという間だぞ」

「えー、嫌なこと言わないでよ」

 

 俺たちが小声で話している間にも、長谷川先生が黒板の隅にスケジュールを書き出していく。

 

【大学見学の流れ】

①引率の大学生と班行動開始

②二十三階のホールからキャンパスツアー

③昼食を挟んで図書館・博物館見学

④午後は自由時間(希望者は個別相談)

 

「で、班ごとに慶明大学の在校生が案内してくれることになってる」

 

 今日のスケジュール説明が終わり、それぞれの班ごとに引率の在校生と合流することになる。

 

「えっと、私たちの班は……文学部三年の斎藤梨利子さんですね」

 

 その瞬間、ゴワスの肩がビクッと跳ねた。

 

「斎藤って、よくある苗字だけど、まさか?」

「その、まさかだ」

 

 ゲンナリした表情でゴワスは俯く。

 

「慶明大学文学部三年の斎藤梨利子です。今日一日、皆さんの班を担当させていただきます」

 

 そこへ笑顔を浮かべたリリさんがやってきた。

 

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