疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第280話 引率のリリさん

 リリさんは、ベージュのコートに薄手のタートルネック、髪はゆるく後ろでまとめられ、落ち着いた雰囲気をまとっている。

 リリさんが丁寧にお辞儀をすると、隣の班の女子たちが「美人……」と小声で囁いた。

 確かに、落ち着いた話し方や所作の一つ一つに、妙な品の良さがある。

 

「えっと、斎藤さんって……」

 

 ヨシノリが興味津々で口を開きかけたところで、リリさんが先に微笑む。

 

「うん、みんなが思ってる通り。そこにいる斎藤隆盛の姉よ」

「やっぱり!」

 

 喜屋武が嬉しそうに声を上げる。

 

「にちょーん! 特に目の感じとか!」

「や、やめてくれ……」

 

 ゴワスは頭を抱え、机に突っ伏したまま呻く。

 

「今日はあくまで大学の先輩として案内するから、身内扱いはなしね」

 

 リリさんは苦笑しながらそう付け加えると、手元のタブレットを操作した。

 

「それじゃあ、さっそくキャンパスツアーを始めましょう。外は冷えるから上着は忘れずにね」

 

 俺たちは指示に従い、十六階の教室を出てエレベーターへ向かった。

 リリさんは歩きながらも自然に大学の説明を交える。

 

「慶明大学の特徴は、やっぱりこの本館がビルみたいに階数が多いことね。だから授業の合間の移動はけっこう大変なの」

「高校と全然違うんですね」

 

 アミが感心したように呟く。

 

「そうね。自由度が高い分、自己管理が重要だからね。サボろうと思えばいくらでもサボれちゃうから、だらしない人は注意ね」

 

 リリさんは穏やかに笑いながら、まるで教員のように説明してくれる。

 

「履修登録とか顕著ですよね。あれ忘れると前期の単位丸々吹き飛びますし」

「おっ、田中君詳しいね」

 

 ちなみに、俺は真っ先にやっていたため、そんなポカをやらかしたことはない。

 

「私のかれ――友達にもいたけど、学生課に謝り倒して何とかなったの。みんなはそうならないようにね」

「うぅ、あたしはやらかしそう……」

「一番いいのは友達と一緒に履修登録することね。何の授業を取るかも相談しながら決められるし、できるだけ友達と同じ授業を取れば休んだときにも心配ないから」

 

 雑談を挟みつつ、エレベーターに乗り込み、二十三階のホールへ。

 扉が開くと、そこはガラス張りの大空間だった。

 大きな窓の向こうには、冬晴れの東京の街並みが広がり、遠くにはスカイツリーまで見える。

 その絶景に、ヨシノリが小さく息を呑んだ。

 

「……すごい。観光スポットみたい」

「景色だけは一流でしょ」

 

 リリさんが冗談めかして肩をすくめる。

 

「ここは普段、学生の展示会や講演会で使われるホールなの。こういう大学見学のときはまずここに連れてくるのがお約束ね」

「へー」

 

 ゴワスは腕を組んで気のない返事をしたが、明らかに居心地が悪そうだった。

 一方で俺は懐かしい安心感を覚えていた。

 二度目の人生でも、この場所に来ると自然と背筋が伸びる。

 

「カナタ。やけに大学に詳しくない?」

「将来のことはちゃんと考えてるからな。調べてればネットにこのくらいの情報は転がっている」

「田中君はしっかり者ね」

「いや、そんな……リリさんほどじゃないですよ」

「なにその呼び方、なんか距離近くない?」

 

 隣にいたヨシノリが何故か頬をふくらませる。

 

「いや、なんとなく言いやすいからそう呼んでるだけ」

「ふーん……」

 

 俺の言葉に納得できなかったのか、ヨシノリは拗ねたようにそっぽを向いてしまった。

 

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