疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第291話 誰かの心に残る一冊に

 机の上にクロスを広げ、見本誌を置き、値札を立てる。

 テーブルの向こうには広大なホール。まだ開場前だというのに、スタッフの誘導やカートの音が絶え間なく響き、金属と紙とインクの匂いが混ざり合っていた。

 今回の部誌の横には、今回の目玉〝芳野リサトコスプレ写真集〟を並べた。

 

「よし、数は合ってる。印刷もきれいに出てるな」

 

 ゴワスが冊子を手に取り、光に透かして確認する。

 

「カナタ、これマジですげぇ仕上がりだぞ」

「完成度高いよな。実物はそれ以上だけど」

 

 視線を向けてみれば、そこには夏コミでも大好評だった〝くっころ飯〟のヒロイン、アイシャのコスプレをしたヨシノリの姿があった。

 ふわりと舞う金髪ウィッグ。

 銀の鎧を思わせる光沢生地のコスチュームは、前回よりもさらに完成度が高い。

 スカートの縁に施された刺繍、肩のアーマー、腰の装飾。どれも手芸部の後藤の手による手作りだ。

 冬仕様ということで、露出は控えめだが、それがむしろ上品さを引き立てていた。

 

「おお……」

 

 思わず声が漏れる。

 ケイコ先輩もトト先も、思わず手を止めて見入っていた。

 

「どう? 改良版アイシャ。ちょっと大人っぽくしたんだ」

 

 ヨシノリはクルッと一回転して、ポーズを決める。

 光が当たるたびに、金の髪がきらめいた。

 

「今回も完成度高いな」

「でしょー!」

「SNSでの宣伝も効果抜群だ」

 

 スマホでSNSを開いて、リツイート数を確認する。

 

「朝の告知ツウィート、もう二千いいね超えてるぞ」

「マジで!?」

 

 ヨシノリが驚いて身を乗り出す。ふらりと香水の匂いがする。

 

「冬コミ合わせで新刊出すって告知してたから、注目されてたんだよ。撮影場所も凝ってたしな」

「うん。あのスタジオ寒かったけど、光が綺麗でよかったよね」

「寒い言いながら笑ってたくせに、写真ではめっちゃ余裕の顔してたもんな」

「そりゃ意地ってやつよ」

 

 胸を張って言うヨシノリ。

 いま目の前にいるのは、本気でやりたいことに臨むコスプレイヤー芳野リサトだった。

 

「俺も負けてられないな」

 

 今回の〝K&K〟では、好評だったくっころ飯の続編に加えて既に出ているポニテ馴染の宣伝。一月から開始するカミラの聖剣の宣伝。その両方も兼ねている。

 ラジオやSNSのおかげで、俺たちは狭い界隈での知名度は得ることができた。

 アミのチャンネルとも定期的に話題を出したり、コラボしたりとで両者の視聴者にも繋がりは見せている。

 

 これを積み上げて、後々の時代に自分自身をコンテンツとして作品の宣伝を行える環境を作りあげるのだ。

 確実に、俺たちは自分たちの物語を現実にしている。

 

「よし、気合い入れてくか……!」

「おう、今回も全力でやるぜ!」

 

 机の前で拳を握ると、ゴワスが笑いながら背中を叩いた。

 ビッグサイトの天井から降り注ぐ白い光が、机の上のタイトルを照らす。

 会場の空気がぴんと張り詰め、紙袋を抱えた参加者たちの気配が通路の向こうでうごめく。

 

 誰もが、今日の一冊との出会いを求めている。

 俺たちの机の上にも、誰かの心に残る一冊になれるかもしれない。

 そう思うと、胸が熱くなった。

 

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