疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
気がついたら、送信完了の通知が出ていた。
パソコンのモニターには、由弦さん宛てのメール。
添付したファイル名は〝ポニテ馴染第二巻_初稿〟。
「あー……しんど」
キーボードに額を押しつけながら、俺は魂の抜けた声を漏らした。
三箇日をまるごと原稿に捧げた結果、ようやく一段落ついたのだ。
除夜の鐘も、俺にとってはただのBGMでしかなかった。
「新年初仕事がこれって、普通じゃないよな……」
不思議と後悔はなかった。
あの集中と熱量を失わずに走り抜けられたのは、作家としての“生きてる感覚”そのものだった。
椅子にもたれ、ゆっくり息を吐く。
脳がカフェインで焼けただれているような感覚。
それでも、心のどこかでは次の一手を考えていた。
「出るかわからなくても、次巻の執筆はしておくべきか……」
よっぽどのことがない限り、プロット段階でNGが出ることはない。
漫画と違って、ライトノベルは物語の大筋を作家側に任せてもらえる部分が多い。
だからこそ、手を止めたら終わりだ。
そんなことをぼんやり考えていると、デスクの上のスマホが震えた。
発信元の名前を見て、思わず笑みがこぼれる。
「あー……由弦さん?」
『カナタ君、本当にありがとう……! おかげで何とかなりそうだよ……!』
受話口の向こうから聞こえるのは、死にかけの編集者の声。
おそらく、同じように徹夜明けなのだろう。
この人もまた、年末年始を仕事に捧げた同志だ。
「ははっ……由弦さんも、お疲れ様です」
俺もかすれ声で返す。
お互い死にかけてるけど、それが妙に心地いい。
この瞬間だけは、同じ戦場で戦う戦友のようだった。
『いやぁ、本当助かったよ。スケジュールもギリギリ間に合いそうだ』
「とりあえず、あとのことはお願いします」
『任せてくれ。本当にお疲れ様。ゆっくり休んでね』
「ははは、明日からカミラの聖剣の作業がありますけどね」
『いや、本当にごめんね!?』
由弦さんの悲鳴みたいな声が電話越しに響いて、思わず吹き出した。
そのあと、少しだけ沈黙。
『……本当にすごいよ、カナタ君。書店で、また君の本が平積みになるんだ。それを思うと、僕はまだ全然眠れそうにない』
「俺もですよ。たぶん、明日も書いてると思います」
言葉にしながら、胸の奥がじんわりと熱くなる。
たぶん俺たちは、こうして限界ギリギリまで燃えて生きていくんだろう。
電話が切れたあと、デスクの上のモニターを見つめる。
画面に映る原稿データのタイトルを指先でなぞり、ひとつ深呼吸した。
「よし……ちょっとだけ、寝よう」
次の原稿に取りかかる前に、ほんの少しだけ仮眠を取ろうと思う。
カフェインのせいで頭は冴えたままだが、それでも瞼は重かった。
そのまま俺は椅子に体を預け、真冬の朝日を浴びながら、ようやく短い眠りに落ちていった。