疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
まだ冬休みが開ける前。
俺はいつものメンバーに加え、漫研のメンバーやアミたちと同じバンドの桃太郎まで集めていた。
「よ、あけおめ……というわけで、動画を作ろうと思うんだ」
「何がというわけよ、この執筆マシーン」
ヨシノリが腕を組み、ジト目で俺を睨んだ。
その隣では、アミがいつもの穏やかな笑みを浮かべている。
「また何か始まる予感がしますね」
「カナタンは何かやってくれるって期待させてくれるさー……うぅ、ヒーサン」
ガッチガチに防寒対策をした喜屋武も楽し気に笑っている。夏はもっとテンションが高かった気がするが、冬の寒さにやられているようだ。
「カナタ。動画を撮るって具体的には何をするんだい?」
話が進まないと感じたのか、ナイトが尋ねてくる。
「漫研と軽音部――というかネーモンとのコラボ企画と銘打ってMVを作りたいんだ」
「MVって……どんなの撮るの?」
首を傾げる桃太郎へ頷いて答える。
「曲はお前たちのバンドの新曲。映像をこっちで撮る。ストーリー仕立てで動画にしたい」
「……は?」
ヨシノリが眉をひくつかせた。
「いやいやいや、あんた三箇日を執筆に捧げたばっかなのに企画立ち上げんの!?」
「今のうちに動き出しておけば、春までに形になるだろ?」
「そういうスケジュール感が怖いのよ! 春までにって、絶対あんたの中じゃ無茶な計算してるでしょ!?」
「落ち着け、ゆきぽよ」
トト先が湯気の立つ缶ココアを差し出す。
「私はいいと思うよ。ギター少女アフロディーテの曲に、田中カナタのストーリーが乗ったら絶対バズる!」
ケイコ先輩も乗り気になってくれた。
アドバイザーとして、この人ほど頼りになる人もいないだろう。
連載も始まるが、既に先の方まで打ち合わせは終わっているし、連載頻度も隔週だ。
ガッツリメインで参加しなければ、ケイコ先輩なら大丈夫なはずである。
デジタルならこの人、トト先より筆が早いからな……。
「映像の演出はどうするんだい?」
ナイトがノートを取り出し、質問を投げかけてくる。こいつもすっかり乗り気である。
「その辺は俺がメインで考えつつ、意見をもらうって感じだな」
「それなら、いっそカナタ君には作詞をしてほしいです」
アミが両手を胸の前で合わせながら、少し照れたように言った。
「作詞?」
「はい。せっかくコラボするなら、歌詞の世界観をカナタ君の物語と合わせたいなって」
「……ふむ」
俺は少しだけ顎に手を当てて考える。
ストーリーと音を一体化させる――それはまさに俺がやりたかったことだ。
「いいな。やろう。アミの曲に、俺の物語を合わせよう」
「はい!」
アミが嬉しそうに目を輝かせる。
その隣でヨシノリが、複雑な顔で俺とアミを交互に見ていた。
「ちょ、ちょっと待って。カナタが作詞? それって、寝ないコースのやつじゃない」
「安心しろ、ヨシノリ。高校生がちょっと徹夜したくらいじゃ死なない」
「どこにも安心できる要素がない!?」
死ぬのは継続的に睡眠時間を削り続けて、その負債を返しきれなくなった中年だ。
ソースは俺。まあ、さすがに今回は文化祭の反省を生かして人に頼るという行為を意識してやっていくつもりだ。
「いいじゃねぇか。俺も全力で協力するぜ」
俺たちの中でも特に乗り気だったのはゴワスだった。
こいつなら乗ってくれると思っていた。
「やっぱり、俺の発想に狂いはなかった」
「発想がそもそも狂ってるのよ……」
俺にとって、これは初めて物語を綴る以外で心から作りたいと思ったものだった。
いや、正確にはこれも一つの物語を作る行為なのかもしれない。
きっかけをくれたのはゴワスだ。
あいつはいつだって俺に気づきをくれた。
だから、この創作活動を通して何かを掴みとってほしい。
そう心から願った。