疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第299話 作詞の赤ペン先生

 歌詞とコンテがひとまず形になった俺は、そのまま勢いでアミに通話をかけた。

 ワンコールで繋がるあたり、待機していたのだろうか。

 

『もしもし、カナタ君。できたんですか?』

 

 明るくて柔らかい声がスピーカーから流れてくる。

 聞くだけで空気が軽くなるような声だ。

 

「一応、歌詞とMVのイメージはまとめた。今送るから、少し待っててくれ」

『はい!』

 

 データを送信すると、アミはすぐに読み始めたらしい。

 数十秒の静寂。

 

『……全体的に、すっごくいいと思います!』

 

 弾けるような声に、思わず肩の力が抜けた。

 

『曲のテーマも、ちゃんと伝わってきます。あと〝アイアムアシューティングスター〟より、〝マイネームイズシューティングスター〟の方が、名前を宣言してる感じで好きです!』

「言われてみれば、確かに……」

 

 よくもまあ、この一瞬でそんな代替案が出てくるもんだ。

 

『夢に挑戦する自分自身こそが願い星。素敵だと思います』

 

 アミは穏やかな声で、しかし迷いなく言葉を重ねていく。

 こうして意見を交わすと、彼女が音楽に向き合ってきた時間の重みを感じる。

 

『ただ……二番のサビなんですけど』

 

 アミの声が、一転して赤ペンを握る先生のテンションに変わる。

 

『〝自分を描こう その夢の中に〟ってフレーズが一番と同じなんですよね』

「ダメなのか?」

『ダメじゃないですけど、一番では挑戦しだした段階で、二番では壁にぶつかって辛い時期を表現していると思うので別の方がいいと思います。たとえば……』

 

 アミはそのまま、息もつかずに思いついたフレーズを口ずさむ。

 

『〝自分を生きよう この今もまさに〟とか、どうでしょう?』

「お前、よく即興でそんな出るな……」

 

 しかも、いい感じにリズムがついてたぞ。

 

『えへへ。私もなかなかやるでしょう?』

 

 照れたような笑いが微かに混じる。

 本格的に音楽の道で食っていこうと覚悟を決めてから、アミは自信に溢れた発言をすることが多くなった。

 文化祭でミスコンと最高のライブを経験したことも大きいだろう。

 

『あと、一番のサビの〝夜空から流れ落ちて〟は表現を変えたほうがいいかもです』

「あー、そこは意味合い的にはそれで行きたいけど、代わりのフレーズが思いつかなくてな」

『〝夜の帳を切り裂いて〟はどうですか?』

「……それ、かなりいいな」

『でしょう?』

 

 アミの得意げな声が返ってくる。

 ぐぬぬ……言葉の表現力で負けるとさすがに悔しいな。

 

『あと、これはただの感想ですが……全体に、疾走感がすごくあって、カナタ君の思い描く走り出す主人公って、やっぱりいいなって思いました』

「アミのおかげだ。お前の曲と、あのライブ見たから書けた」

『そう言ってもらえると嬉しいです』

 

 少し照れた声に、反射的に気まずさを覚えてしまう。

 

『えっと、話戻しますね。MVのほうなんですけど――』

 

 アミは一度咳払いして、仕事モードへ戻る。

 それから俺の考えたMVのイメージにアミが意見を出していった。

 

「アミって、映像のセンスもあるよな」

『カナタ君のイメージがすごくはっきりしてるから、連想しやすかったんです』

「そう言ってもらえるのは助かる」

『曲のほうも、これならすぐ形にできます』

「任せるよ」

『……はい。今の私の全部を込めて作ります』

 

 息を吸う音。

 そしてアミは、決意を宿した声で言った。

 

『この曲も、絶対に最高の形にします。だからカナタ君、期待しててください』

「ああ、いっちょ最高のものを頼むわ」

『はい! 任せてください!』

 

 照れと嬉しさが混ざった、少し震える声。

 通話が切れ、部屋には静寂が戻る。

 

「さて、取れるときに睡眠っと!」

 

 休めるときに休まないと、いざというときに無茶できないからな。

 

 

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