疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
アミとの通話を終えた次の日。
たっぷり六時間の睡眠を取った俺は、寒さを和らげてくれる冬の朝日と共に目覚めた。
「ふぅあぁぁぁ……よく寝た」
俺があくびをするのと同時に、けたたましくスマホが鳴る。
『カナタ君! おはようございます!』
なんかテンションと音量調整がぶっ壊れたアミから通話がかかってきた。
『曲できました!』
「はぁ!?」
昨日の深夜に歌詞ができたばかり。そこから作曲まで終わらせるなんて常軌を逸している。
『エナドリエンジンアクセル全開でいけちゃいました!』
「お前、それやったらマジで死ぬからな!?」
『カナタ君に言われたくないです!』
「いや、まあ、それはそう……」
何せ、実際に一回死んでるからなぁ。
『とにかく、出来上がった曲のデータ送りますから聞いておいてください。私は寝ますので』
「ああ、ゆっくり休んでくれ。マジで」
アミがクリエイターとして成長した反面、よくない方向に進んでいる気がしないでもない。
これ、また俺のせいか?
「じゃ、曲の方向性も固まったし、そろそろ本格的に動くか」
冬休みの終わり。
俺は教室の前の廊下に集まってくれたいつメンに向けてそう宣言した。
「昨日まで原稿漬けだったのに、どういう燃費してんの?」
返ってきたのは、ヨシノリの呆れ声である。
アミはと言えば、白いマフラーを抱きしめながら嬉しそうに頷いた。
「ようやく映像のほうも進みますね!」
「じゃあ、アミは映像に関して適宜アドバイスをくれ。編集に必要なテンポ感とか雰囲気は随時共有する」
「了解です!」
この子は本当に、音楽に向き合うときの目が強い。
夏の文化祭で初めて彼女の歌を聴いたときの衝撃が、胸に蘇る。
「で、撮影なんだけど――」
「ちょっと待って、カナタ」
俺の言葉を遮ってナイトが手を上げた。
真面目な顔をしているが、その裏でワクワクしてるのが見え透いている。
こいつがポーカーフェイスを崩すことも多くなった。
親友として、歓迎すべき変化だろう。
「学校内で撮影するなら、きちんと許可を取らないとダメだ。体育館や部室もそうだし、廊下も人通りがあると危険だ。スケジュールも考えないと」
「それについては抜かりない。長谷川先生にアポ取ったから、今日の放課後に話してくる」
「行動早っ!?」
「考より行。行しながら考してこう、だ」
「さっすが、カナタンさー!」
みんなの表情はどこか楽しそうだった。
「カナタン、撮影ってあたしたち何したらいいね?」
喜屋武がマフラーで顔の半分を埋めながら聞いてくる。
冬の気温にやられていつものテンションの三割減だが、目はしっかり輝いていた。
「曲のイメージを動く映像として見せる。ヨシノリとゴワスを主軸にイメージ映像を撮る。漫研組は創作の様子、演奏パート映像パートはアミたちネーモン。全部組み合わせて高校生の等身大と熱量を作る」
「いいじゃん。MV撮るのは初めてだし、テンション上がるね」
桃太郎が楽し気に笑う横で、ヨシノリが俺を小突いてくる。
「ちょっと、何であたしと斎藤が主軸なのよ」
「二人共バスケ部だろ? 撮影場所も絞りやすいし、表向きの青春っぽさが出る」
「表向きって……」
「本質はそっちじゃないからな」
「あー……なんとなくあんたが撮りたいものがわかった気がする」
冬の光が窓から差し込み、彼女のポニーテールの先を淡く照らす。
「よし。じゃあ放課後は先生に許可取り行って、そのあと軽くロケハンして終わり」
『了解!』
こうして、俺たちのMV撮影が動き出した。