疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
ゲームパートは一通り撮り終え、良いカットも十分に押さえられた。
ふぅ、とゴワスが息を吐いたタイミングで、俺はふと部屋の隅に視線を向ける。
「ところで、喜屋武はバンドに合流しなくていいのか」
「うぐっ」
ヒーターの真正面でぬくぬくと溶けかけていた喜屋武が、露骨に肩を震わせる。
俺の指摘に喜屋武はしまったという表情を浮かべる。
まさか、こいつ……。
「お前、寒い軽音部の部室から逃げてきたな」
「さ、さあ、何のことかー。わんはただ、ここのほうが命の危険が少ないというか……」
ヒーターの温風に頬を赤くしながら言っても説得力がない。
図星だったようだ。
「バンド練習でベースがいないのはまずいだろ。とっとと練習戻れ」
「うわーん、カナタンの鬼ぃ! 外の世界は寒いさー!」
ぶつぶつ文句を言う喜屋武を、俺はひょいと胴ごと抱えて部室の扉まで移動させる。
扉の前で引きずり出される瞬間、喜屋武はヒーターへ未練がましい視線を投げた。
「ヒーターちゃん……また来るさ……」
「来るな。練習しろ」
扉を閉めると、部室に再び静かな温度が戻った。
「さて、次は創作パートだ」
「トト先とケイコ先輩、それから俺。三人が創作している様子後ろからを撮る感じでいきましょう」
「はーい。じゃあ、私は一話のネームを描く感じね」
ケイコ先輩はタブレットを立てかけ、タッチペンをくるくる回しながら笑った。
「自分は描いてるからよろしく」
トト先がアナログの原稿を広げる。ペン入れ途中といった感じにしてあるが、線は相変わらず綺麗だ。
「じゃ、俺も原稿やってる感じで」
俺はパソコンで文章入力画面を開いた。
画面の文字は一見作業中だが、宣伝用に調整した書いてる風の素材だ。
「ヨシノリ。撮影まかせたぞ」
「はいよー。じゃあ回すね。自然に作業してる感じでお願い」
ヨシノリがカメラを構え、三人の背後からゆっくりと角度を探す。
まずはケイコ先輩の手元。
ペン先が液タブの画面を滑るたび、淡く反射して光が走り、線が生まれていく。
「うわ、ケイコ先輩の指って綺麗だよねぇ……」
「ヨシノリ、撮影中」
「あ、ごめん」
次にトト先。
アナログ特有のペンの擦れる音が、静かな部室に心地良く響く。
ヒーターの温風でほんのり暖まりながら作業する姿は、なんだか冬の創作風景そのものだった。
最後に俺。
キーボードを叩くたび、一定のリズムで音が積み重なる。
同じ部室にいながら、三人が別々の世界に沈んでいる。
そして、確かに繋がっていると感じられる時間だった。
「カナタ。俺、今の撮ってもらってるの見て思ったんだけどさ」
「何だよ」
「やっぱり、やりたいことやってる人の姿って、カッケェな」
その言葉に、不思議と胸が熱くなった。
ゴワスの夢は、まだ遠い。
それでも、不思議と届かない距離ではなくなっている気がした。
「お前もそうだろ。撮っててわかったよ」
「え?」
「ゲームしてるときのお前、めちゃくちゃ輝いてたから」
「まだまだお前にゃ敵わねぇよ」
「まったく、いい顔しちゃってさ……」
ヨシノリがその様子を見て、楽しそうに笑っていた。
創作の匂いがするこの狭い空間は、俺たちの青春で満たされていた。