疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第310話 バレンタインは貴重なラブコメ資料

 バレンタインが近づくにつれ、男子たちが妙に落ち着かなくなってきた。

 クラスのあちこちで、男子同士がヒソヒソと何か話し合っている。

 いつもは騒がしいグループも、今日はやけに声を潜めて真剣な顔をしていた。

 

「なんか、みんなソワソワしてないか?」

 

 休み時間、俺がつぶやくと、机を向かい合わせて座っていたゴワスが即座に反応した。

 

「そりゃあ、バレンタインが近いからだろ」

 

 ゴワスは腕を組み、妙に渋い顔をしている。

 

「そんなに大事か? バレンタインって」

「いや、大事だろ」

 

 ゴワスの返答が、あまりに即答すぎて少し笑ってしまった。

 すると横から、ナイトがストローでジュースを吸いながら静かに言う。

 

「カナタ。男子にとってのバレンタインはね、試練の日なんだよ」

 

 ナイトは妙に悟ったような顔をしていた。

 

「試練?」

「もらいすぎると大変なんだ」

 

 遠い目で教室の天井を見つめると、ナイトはため息と共に語り出す。

 

「多すぎても消費が大変なんだ。手作りは早く食べないといけないし、高いチョコをもらうと気が引けるし、ホワイトデーは三倍返ししないとだし」

「絶対それ、姫乃さんのせいだろ」

 

 もらいすぎることによって発生する独占欲からの暴走。それとナイトは長いこと付き合ってきたのだろう。

 マジであの闇の幼馴染は罪深いな。

 俺がナイトに同情していると、ゴワスが机に頭を置いた。

 

「俺なんてな……!」

「どうしたよ」

「毎年期待して……ゼロなんだ」

「知るかよ」

「だけど、今年こそは違う」

 

 急にゴワスが顔を上げた。

 その表情は、どこか希望に満ちていた。

 

「最近仲良くしてくれてる女子がいて……ほら、クリスマス会っただろ? その子から、ワンチャン……ワンチャンあると思うんだよ!」

「あー……あの子な」

 

 あの癖の塊みたいな女子。確か和気藍梨さんだったか。

 文化祭がきっかけで知り合ったらしいけど、未来じゃどうなっていたのだろうか。

 

「今年の俺は一味違うぜ」

 

 ゴワスは嬉しそうに鼻を鳴らす。

 

「そんで、お前はどうなんだよカナタ」

「俺? いや、別に」

「別にって、お前……バレンタインだぞ?」

「今年は観察で忙しいからさ」

「観察?」

「恋愛イベントの宝庫だろ、バレンタインは。誰が誰に渡すのか観察できる機会は貴重だ。ラブコメの資料として最高じゃないか」

「お前って奴は本当に作家脳だな」

 

 俺の言葉に、ゴワスは頭を抱えはじめる。

 

「本気で他人事じゃねぇか! モテるくせに!」

「別にモテてはないだろ」

「いやモテてんだよ! 普通に! お前だけ自覚ねぇけどな!?」

 

 周囲の男子まで頷き始める。そんなバカな。

 すると、ゴワスの肩に、そっとナイトが手を置く。

 

「大丈夫。今年はきっともらえる。僕は君の努力を見てきた」

「ナイト……!」

 

 感極まっているゴワスだったが、半分は男子のノリの茶番だろう。

 しょうもない茶番はさておき、俺は内心ワクワクしていた。

 

 最近ゴワスと仲良くしている和気藍梨さんの動き。

 ナイトにチョコを渡す女子軍団。

 俺が現在マークしているカップル候補たち。

 

「面白くなりそうだな」

 

 今年のバレンタインは、いろんな物語が動く。

 一体どんな結末が見られるのか楽しみだ。

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