疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
俺たちの一年を象徴するMVが完成した。
長かったようで、あっという間のようで、それでも確かに積み重ねてきた時間だった。
季節はまだ冬。
外では冷たい風が木々を揺らしているけれど、部屋は暖房と緊張で妙に熱気があった。
今日、いよいよMVを公開する。
最近はトト先とケイコ先輩が知り合いの漫画家さんのヘルプでいないため、俺とヨシノリ、ゴワスの三人でなんとか生放送を回し、たまにアミをゲストに呼んだりしていた。
その甲斐あって、二人の知名度も上がり、MVの宣伝も大々的に行えた。
「それじゃあ、アップしますね」
「き、緊張するな」
「別にこれでバズることが目的じゃないんだから、そう固くなるな」
「ば、バズ?」
ああ、そうか。まだこの時代じゃバズるって表現は一般的じゃなかった。
「大前提として、このMVは俺たちの自己満足に過ぎない」
「ええ、編集面はカナタ君や斎藤君も頑張ってくれましたけど、実写のMVとしてのクオリティはそこまで高いわけじゃないですもんね」
俺の言葉にアミが苦笑して頷く。
「もちろん、最善は尽くした。素人っぽさも今なら評価に入るだろうし」
トト先やケイコ先輩のイラストが重なって映像が動き出す編集とか、よく言えば工夫、悪く言えばごまかしは盛に盛った。
「これがあたしたちのパブリックイメージでの原点になると思えば悪くないんじゃない?」
「大人になってもコラボとかしやすくなりそうですもんね」
ヨシノリとアミが楽し気に未来の展望を語る。
来年の話をすると鬼が笑うなんて言うが、今は爆笑されてもいいんじゃないかと思う。
「……俺さ」
ゴワスが呟いた。
「もっと……もっと、頑張りてぇ……!」
震える声は、決意と興奮で詰まっていた。
アミがふわりと微笑む。
「じゃあ、また一緒に作りましょうよ。次はもっとすごいの、撮りましょう!」
「ああ、そうだな……!」
「あのな。MVが大コケしたあとみたいな会話やめてくれるか?」
「ぷっ、確かに斎藤、失敗したあとみたいじゃん!」
そんな会話をしながらアップされたMVを眺める。
もう何度も制作過程で見た映像に、耳にタコができる程聞いた楽曲。
それでも、U-TubeにアップされたMVは新鮮な気持ちで見ることができた。
『絶対に譲れないから~この道を選んだ~♪ 願い星は自分自身~♪』
最初は屋上でアミたちが楽器を構えて演奏をしている映像からスタートする。
『やりたいことやって~何が悪いんだ~♪ この意志が未来へ続く~♪』
前奏が終わり、画面は薄暗い体育館へ。
照明がまだ落とされたままの静寂の中で、体育館の中央に立つゴワスの姿が映る。
そこにスッと差し込む一筋の光。
振り返るゴワスの横顔とともに、レイアップのフォームに入る。
続けて、ヨシノリが走り込むカット。
髪が照明を反射してふわりと揺れ、スポーツ少女特有の躍動感が画面いっぱいに広がる。
曲は続き場面転換が入る。
場面転換し、トト先とケイコ先輩、そして俺の後ろ姿が移り創作風景が映し出される。
ポニテ馴染にカミラの聖剣。そのメイキングのような映像に、俺がただただタイピングをしている映像だ。
そして、二人が屋上で演奏するアミたち描いた途端、映像がイラストのメイキングから実写へと切り替わりサビに入った。
『自分を描こう~その夢の中に~♪ 汗拭って~心のままに!』
やっぱり、サビはアミたちが演奏している映像が絵になる。
アミの歌唱力も相まって、きちんと〝MVのサビ〟という感じになっている。
『My Name is Shooting Star♪ 夜の帳を切り裂いて~♪ 光差す大空へ~♪』
サビのラストのほうでは、体育館の中央でヨシノリとゴワスが背中合わせでシュートを放つ。
当然編集だが、二つのボールは綺麗にゴールポストに吸い込まれてネットを揺らした。
曲が二番に入ってからは、ヨシノリのコスプレの準備をする映像やゴワスがゲームでコンボ練習をする映像が主体となっていく。
俺たちはアップされたMVを食い入るように眺めた。
みんなが息を吞み、誰一人として言葉を発しなかった。
『まだ見ぬ明日を~掴みにいこうぜ~♪ 立ち止まるより~走り出せ!』
ついにやってきたラスサビ。
『涙の跡が~♪ 虹の架け橋になるから進め、希望の空へ~♪』
映像はコミケでコスプレを披露するヨシノリ、ゲームの大会風の場所でゴワスがコントローラーを握ったままガッツポーズをする場面へと変わる。
『My Name is Shooting Star♪ 地図はあるから迷わずに~夢の遥か先へ~♪』
そして、最後は屋上で演奏をするアミたちの映像になって段々とフェードアウトしていく。
『絶対に譲れないから~この道を選んだ~♪ 願い星は自分自身~♪』
ラストはリフレインで締め、映像も暗転していく。
再生数はまだカウンターが回り始めたばかり。
固定ファンは待機して見てくれていたのだろう。
でも、今は数字なんて気にしなくていい気分だった。
「なぁ、奏太」
ゴワスが小さく笑って言った。
「ん?」
「俺、お前と友達になれて本当に良かったよ」
「ははっ、それはこっちのセリフだっての」
こいつと出会い本音でぶつかり合っていなければ、今の俺も、このMVも存在していなかったのだから。