疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
三学期も終盤。
三月に突入したというのに、まだまだ肌寒い中、俺たちは進路調査票を配られていた。
慶明高校は慶明大学の付属校だ。
そのため、二年生になると内部推薦組、他大理系組、他大文系組、の三つに授業のコースが分かれることになる。
内部推薦組は二クラス。他大理系組、他大文系組がそれぞれ一クラスの計四クラスに分かれることになるのだ。
「さっさと内部推薦組で出すか」
「そうだね。僕ら全員内部推薦だし」
「ま、わざわざしなくてもいい受験勉強をする理由もねぇからな」
俺の言葉にナイトとゴワスが同意する。
そもそも、同じ大学にいけばリリさんから過去問をもらえる可能性だってある。
さすがに、俺たちが入学する頃にはリリさんは卒業してしまっているだろうが、教科書すらそのままもらえる可能性があるゴワスにしてみれば爆アドである。
地味に高いんだよな、大学の授業で買わされる教科書。
「にしても、今日はバドミントンか……やる気出ないな」
「体育でカナタにやる気があるときなんてあったかい?」
今は体育の授業。俺たちは体育館の隅で弧を描くシャトルをのんびり眺めながら話していた。
「奏太はバスケだと少しだけ頑張るよな」
「かろうじて動きがわかるスポーツだからな。あと、昼休みにするバスケは青春感あるから体験しておきたかっただけだ」
「授業でやる気出しなよ……」
ナイトに突っ込まれるが、授業はむしろサボってくっちゃべってるほうが青春感があるだろ。
「てか、奏太、騎志。ホワイトデーどうすんだ?」
「普通にまとめて買う予定だ」
「……嫌なことを思い出させないでくれ」
ナイトが俺の横でゲンナリした表情を浮かべる。
「別に義理なんだから倍返ししなくていいだろ」
「いや、本命で渡してきた子に安いチョコで返すのは気が引けるというか……」
「バカ言え。その気がないなら塩対応が一番いいだろ。脈なしって思わせるのも大事だぞ」
「君がそれを言うのかい?」
何故かナイトが不満げな表情を浮かべていた。
「そんなどうでもいい連中のチョコより、愛夏へのお返しをちゃんと考えてほしいもんだな。あいつ、ただでさえ料理上手なのに、もっとおいしいチョコを作るってスポ根みたいな状態になってたからな」
ヨシノリが教えを請っていたこともあって、田中家のキッチンは一時的に〝グランメゾン愛夏〟になっていたからな。
「……それもそうか」
ナイトも、さすがに納得した様子で頷く。
「ゴワスも、藍莉さんへのお返し考えとけよ」
「藍莉って甘いもの苦手っぽいんだよなぁ」
「別にチョコじゃなくてもいいだろ」
俺だって、お返しはチョコにするつもりはない。
こういうのは気持ち(金額)が大事なのだから。
ホイッスルの音が鳴り、体育の授業が終わる。
シャトルが床に転がり、ざわついていた体育館も少しずつ落ち着いていった。
「終わった終わった……寒いし疲れた」
「お前、ほとんど動いてなかっただろ」
ゴワスが呆れた視線を向けてくる。
運動よりも、今は考え事のほうが頭を占めていた。
更衣室へ向かう途中、反対側から女子の集団が出てくる。
笑い声が弾み、誰かがホワイトデーの話題を振ったのが聞こえた。
「今年どうなるかな?」
「期待しちゃダメでしょー」
「でもさぁ……」
内容までは聞こえない。
三月という季節が、否応なくその話題を連れてくる。
三学期も、もう終盤だ。
季節は、ちゃんと次へ進もうとしている。