疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第338話 金目鯛の煮付けと写真撮影

 三ツ星ホテルの高いコースということもあり、料理は仲居さんが適宜持ってきてくれる。

 運ばれてきたのは、今日のメインディッシュと言っても差し支えない料理、金目鯛の煮付けだ。

 煮汁に身を沈めた金目鯛は、堂々と皿の中央に横たわり、照り返す光がその旨みを誇示していた。

 

「デッカ……これ、金目鯛?」

「ここらで魚といえば、金目鯛だからな」

「伊勢エビに続いて、また豪華なやつだ……!」

 

 ヨシノリは嬉しそうに箸を伸ばす。

 箸を入れると、身は驚くほどやわらかく、ほろりとほどける。

 甘辛い煮汁が舌に広がり、幸せな気持ちになる。

 

「んー! これめっちゃおいしい!」

 

 ヨシノリが目を輝かせる。

 

「身がほろほろで、味がしっかり染みてる!」

「金目鯛の煮付けは、ちゃんとしたところで食べると別格だからな」

「うんうん!」

 

 ヨシノリは夢中で箸を動かしている。

 その様子を見て、俺も自然と笑みがこぼれた。

 

 こうして一緒においしいものを食べる時間は、やっぱりいいものだ。

 味がわからない分、ヨシノリが俺の一万倍はおいしそうに食べてくれるからな。

 

「次、これ食べていい?」

「どんどん食べな」

 

 椀物には、甲殻の赤が映える一品が静かに湯気を立てていた。

 澄んだ出汁の奥に、野菜の甘みと海の香りが折り重なり、口に含むたび、体の芯がゆっくりとほどけていく。

 

「あったまる……」

 

 ヨシノリが椀を両手で包むようにして持ち、ゆっくりと出汁を啜る。

 

「この出汁、優しい味だね」

「ああ、素材の味を引き立ててる」

 

 俺も椀を手に取り、一口啜る。

 温かさが喉を通って、胃へと落ちていく。

 体が、内側から温まっていくのがわかった。

 

「ご飯、つやつやだね」

 

 ヨシノリが一口食べて、目を細める。

 

「んー、ごはんまでおいしい!」

 

 ちなみに、ヨシノリが金目鯛と共にバクバク米をかっ食らった結果、おひつはすぐに空っぽになり、おかわりすることになった。

 こういうところの米っておかわりできるのか……。

 

「ねえ、カナタ」

「ん?」

「今日、ホントに来てよかった」

 

 ヨシノリが、ふと顔を上げる。

 

「さっきの全裸事件は最悪だったけど、この食事だけでも価値あったわ」

「それは良かった」

「ありがとね」

 

 その笑顔は、まっすぐで、屈託がなかった。

 俺も素直に笑い返す。

 

「こっちこそ、楽しんでもらえて良かった」

「失礼します」

 

 仲居さんが部屋に入ってきた。

 

「お食事の記念に、お写真をお撮りしましょうか?」

「あ、お願いします!」

 

 ヨシノリが即答する。

 

「カナタ、一緒に撮ろう!」

「ああ」

 

 俺たちは並んで座り、仲居さんにスマホを渡す。

 

「はい、では撮りますよー。はい、チーズ!」

 

 カシャリ、とシャッター音が鳴る。

 

「もう一枚、いいですか?」

「どうぞどうぞ」

 

 何枚か撮ってもらい、スマホを返してもらう。

 

「ありがとうございました」

 

 仲居さんが去り、俺たちだけになる。

 

「見せて見せて!」

 

 ヨシノリが身を乗り出してくる。

 画面には、浴衣姿の俺たちが並んで写っていた。

 ヨシノリは満面の笑みで、俺も自然な笑顔を浮かべている。

 

「いい写真だね!」

「ああ、いい記念になるな」

 

 ヨシノリは嬉しそうに写真を見つめる。

 

「これ、あとで送ってね」

「了解」

 

 二人で旅行に来た事実を残せる、大切な一枚になった。

 

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