疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

341 / 408
第341話 結局、何もできなかった

 中学二年になっても、状況は変わらなかった。

 いや、もっと悪くなった。

 カナタは、ほとんど教室にいなくなった。

 

 朝来て、授業を受けて、休み時間になると消える。

 昼休みも消える。放課後も消える。全部図書室だ。

 あたしはもう、図書室に様子を見に行くこともやめていた。

 

 見ても何も変わらない。

 カナタは相変わらず、何かに夢中になっている。

 あたしの入る隙間は、そこにはなかった。

 

 二年生の春、窓から見える桜はもう散り始めていて、風が吹くたびに花びらが校庭を横切っていく。

 新しいクラスになって、席替えもあって友達との会話も増えた。

 そんな中で、カナタの存在だけが薄くなっていく。

 

 朝のホームルームでは、カナタは窓際の席で教科書を開いている。

 チャイムが鳴ると同時に立ち上がり、鞄だけを持って教室を出る。

 その背中を見送ることに、あたしは慣れてきていた。

 

「一緒にお弁当食べよう」

 

 昼休みになると、クラスメイトが声をかけてくれる。

 あたしは笑顔で頷いて、カナタの空っぽの席を見ないようにする。

 机の上には教科書が置かれたまま。椅子だけが妙に整然と収まっている。

 

「佐藤さん、田中君と仲良かったよね?」

 

 クラスメイトに聞かれたことがある。

 

「うん、幼馴染だから」

「そうなの? その割に、最近あんまり話してないよね」

「……そうだね」

 

 それ以上は、答えられなかった。

 幼馴染なのに、何も知らない。

 何をしているのかも、何を考えているのかも。

 ただ、カナタが遠くへ行ってしまったことだけがわかった。

 

「由紀ちゃん。女バスのスタメンなったんだって! すごいじゃん!」

「ありがと。まあ、バスケは好きだし、頑張りたくてさ」

 

 あたしもあたしで部活に集中していたこともあり、カナタのことは段々と気にしなくなっていた。

 そうやって、少しでも自分を騙していないとやってられなかった。

 

 幼馴染が疎遠になるなんてよくあることだ。

 そういうことなんだと、わかった。

 

 そして、そのまま卒業式の日が来た。

 

 卒業式の日は、よく晴れていた。

 体育館での式が終わり、教室で最後のホームルームを受ける。

 先生の話は、ほとんど頭に入ってこなかった。

 ただ、もう会えなくなるかもしれない、という事実だけが、重くのしかかっていた。

 

 ホームルームが終わり、荷物をまとめる。

 教室は、別れを惜しむ声で溢れていた。

 

 あたしは、カナタの席を見た。

 カナタは黙々と荷物をまとめている。

 

 これが、最後かもしれない。

 そう思っても、あたしの足は動いてくれなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。