疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
記憶が、奔流のように押し寄せてくる。
二周目の高校生活をいかに過ごしてきたか。
再び始まったヨシノリとの日々。
小説家デビュー。
みんなで行った夏の鴨川旅行。
漫研でコミケに向けて必死になったり。
文化祭で最高のライブを見たこと。
プロゲーマーやコスプレイヤーという夢を応援したこと。
ヨシノリ。ナイト。アミ。喜屋武。ゴワス。
みんなとの日々が頭の中に蘇る。
全部、思い出した。
俺は別の世界にいたんだ。
ヨシノリがいて、仲間がいて、充実した日々があった世界に。
「あの、先輩?」
伊代が、どこか心配そうに俺を見ている。
その表情からはあの神の使いの神秘的な雰囲気は感じられない。
「すまん、話があるんだったな……二周目の話か?」
「やっぱり、本当なんですね」
伊代の声には、驚きと興奮が混じっていた。
「私は、ただの一年生です。神野塚伊代。趣味は読書とネットサーフィン。特技は特にありません」
その口調は、あの神の使いとしての伊代とは違う。
もっと普通で、もっと人間らしい。
「でも、君は二周目のことを知っている」
「はい。知ってます。っていうか、知らされました」
伊代は少しだけ困ったような顔をする。
「一週間くらい前ですかね。夢を見たんです」
「夢?」
「はい。すっごくリアルな夢で」
伊代は両手を組んで、その夢の内容を語り始めた。
「夢の中で、私によく似た女の人が出てきて。翡翠色の髪をしていて、すごく神秘的な雰囲気の人でした」
「それが、二周目の伊代か」
「たぶん、そうです。その人が言ったんです。『私は別の世界線で、神の代行として生きている私』って」
伊代の声が、少しだけ震える。
興奮しているのか、それとも不安なのか。
「最初は、ただの夢だと思いました。変な夢見たなって」
「だろうな」
「でも、次の日も同じ夢を見て。その次の日も。一週間ずっと、同じ夢を見続けたんです」
伊代は自分の頭を指さす。
「そして、気づいたら頭の中に知識が入ってました。二周目の世界のこと。田中奏太先輩のこと。佐藤由紀さんたちのこと」
「記憶を、飛ばされたのか」
「そういうことみたいです」
伊代は頷く。
「夢の中の私、神の使いの私が言ってました。『田中奏太がそっちの世界に戻されたら、彼に会って話をしてほしい』って」
「それで、俺を探しに来た、と」
「はい」
伊代は真っ直ぐに俺を見る。
「正直、最初は信じられませんでした。異世界とか、二周目とか、神の代行とか。そんなの、小説やアニメの中だけの話だと思ってたから」
「まあ、普通はそう思うよな」
「頭の中にある記憶は本物でした。私が経験したことじゃないのに、すごくリアルで。まるで、本当に体験したみたいに」
伊代は少しだけ困ったような笑みを浮かべる。
「それで、信じることにしました。これは本当に起きていることなんだって」
「君は、怖くなかったのか?」
俺の問いに、伊代は首を横に振った。
「怖くなかったと言えば嘘になります。でも、ワクワクしました」
伊代の目が、輝く。
「ワクワク?」
「はい。だって、異世界ですよ? 別の可能性の世界。私がもしかしたら神になっていたかもしれない世界。そう新世界の神です!」
伊代の声が、少しだけ高くなる。
「小説みたいじゃないですか。すごく非日常で、すごく特別で!」
「意外とミーハーなんだな」
「ミーハーって言わないでください。ロマンです、ロマン」
伊代は頬を膨らませる。
その仕草は、年相応の少女のものだった。
神の使いとしての威厳も、超越者としての雰囲気もない。
ただの、一年生の女子高生のものだった。