疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
現在進行形で過去を改変している。
俺の身に起きたことが、正真正銘のタイムリープになったからこそだ。
その事実に気づいたとき、全員が言葉を失った。
そんな中で、トト先が手を挙げる。
「一つ、仮説」
その声は、いつもより真剣だった。
「カナぴが二周目に行ったのは、死んで魂が移動したから。一周目に戻ってきたのは、世界の修正力に弾かれたから」
「そうです」
「なら、二周目へ戻るには――」
トト先が、俺をまっすぐに見る。
「世界の修正力を、逆に利用すればいい」
その言葉に、全員が固まった。
世界の修正力を、逆に利用する。
それは、どういうことだ。
「二周目の世界、カナぴの小説が具現化した世界」
トト先は熱を帯びた口調で続ける。
「ならカナぴ、これから先の展開を操れる」
「操れるって、どういうことですか」
トト先が、ホワイトボードを指す。
「物語を書き換えればいい」
「物語を、書き換える?」
いち早くトト先の考えを理解したケイコ先輩が息を呑む。
「都々ちゃん。あなた、まさか――」
「そう。今、一周目に戻ってきたこの状況も含めてポニテ馴染を書き換えればいい」
「なっ」
そうだ。二周目の世界ができたトリガーは、俺がポニテ馴染を書いたことだった。
その内容を並行世界移動も内容に織り込んだ作品にしてしまえば、俺は物語の終幕と同時に元の世界に戻れる。
「書くべきはポニテ馴染のエピローグ。一周目のこの世界で書いてしまえば、きっと戻れる」
暗闇の中に希望の光が溢れ出す。
俺は、拳を握りしめる。
物語を紡ぐ。それなら、俺にでもできる。
「それだけじゃダメだと思う」
しかし、ケイコ先輩はその仮説に異を唱える。
「田中君はラノベの新人賞に応募するボリュームでポニテ馴染を書いたはずだよ。それなのに二周目の世界はラブコメ世界として続いていた」
「言われてみれば、そうですね」
今までの情報を総合するならエレベーターアクション後、俺とヨシノリが仲直りしたタイミングで世界はラブコメ世界を脱して一つの現実になっていなければおかしい。
「つまり、一周目の未来において、田中君が亡くなった後にポニテ馴染を引き継いだ人物がいる」
その言葉に、俺は目を見開いた。
そこまでの考えには思い至らなかった。
「じゃあ、俺はそいつがポニテ馴染の続きを書かないようにしないといけないってわけですか」
「うん、それが鍵になると思う。ここは一周目の世界の高校時代。タイムリープしたのと同じ状態。過去にいれば、君は未来を変えることができるんだよ」
トト先が閃き、ケイコ先輩が補足する。
たとえ世界が変わっても、この二人のコンビは最強だった。
「でも、その人をどうやって特定するんですか?」
伊代が素朴な疑問を投げかける。
「ま、そこは地道に一歩ずつだ」
小説も人生も同じだ。
不器用な俺は一つずつ、愚直に積み上げるしかないのだ。
「幸い候補は絞られている。一周目で俺と関係があった人間を片っ端から洗う。それでいい」
「続編書くなら自分たち、一番可能性高い」
「私たちに関しては、ここで情報を共有した時点で書かないって決めちゃえばいいもんね」
「いや、そもそも、お二人とは一周目で関わりありませんからね?」
トト先に至っては、もともと雲の上の人だったからな。
「とにかく、これでやることは決まりましたね田中先輩!」
「一周目の俺の人生における関係者を探しつつ、ポニテ馴染をリメイクする」
それこそ、俺が過去でやるべき仕事だ。