疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
さすがに、その日は帰宅してから十分に睡眠を取った。
無茶はクリエイターの十八番だが、必要なところで無茶をするためにも、休息は必要不可欠だ。
じっくり休んだ翌日、放課後になってから俺と伊代は合流した。
「校内だと先輩と関わりがあった人物って、原先輩くらいですよね?」
伊代が、手帳を開いてメモを確認している。
昨日の作戦会議で話し合った内容が、びっしりと書き込まれていた。
「……こうして聞くと一周目の人間関係の薄さがよくわかるな」
一周目で、俺に友達と呼べる人間はいない。
関係者なんて数えるほどしかいないのだ。
「原先輩に関しては卒業してから関わりはないし、創作自体やめちゃってるんだよなぁ」
「一番可能性はありそうなんですけどねぇ」
伊代の指が、ページを滑る。
「そもそも新人賞に応募した時点で世には出てないんですよね?」
「ああ。最終選考まで残ってるのは確認したけど、仮に賞が取れたとしても受賞前に作者が亡くなってる時点でなぁ」
可能性があるとすれば、編集部の人間か?
ヨシノリの父親である由弦さんは、シンフォニア文庫の編集者だけど、編集者が個人的に続編を書くことなんてあり得るのだろうか。
何かのきっかけでヨシノリが俺の未発表の原稿を手に入れて続きを書いたというほうがまだしっくりくる。
「あの、先輩」
伊代が、顔を上げる。
「佐藤由紀さんには接触しないんですか?」
「接触は最後にする」
俺は伊代から視線を逸した。
「なんでですか?」
「未来への影響を考えたら、ヨシノリとの接触は慎重にならないといけない」
自分で口に出しながらも、声が震える。
「一周目の俺とヨシノリは、疎遠になったままだ。高校時代に再会することもない」
その事実が胸を締め付ける。
「俺とヨシノリの再会は世界にどう影響を及ぼすかわからない。再会するのは俺が二周目に戻る目途が立ってからだ」
詭弁だった。
本当は、一周目のヨシノリに会ってどんな顔をすればいいかわからなかったからだ。
この一年。ヨシノリとずっと毎日を過ごしていた。
それが消えた状態のヨシノリと会ったとき、俺がまともでいられる保証がなかったのだ。
「……慎重にならないといけないんですね」
「だから、ヨシノリは最後だ」
その言葉を口にするのが、こんなにも辛いとは思わなかった。
会いたい。
今すぐにでも、会いたい。
だが、会えない。会ってはいけない。
「妹さんの愛夏さんはどうするんですか?」
伊代が、メモを見ながら聞く。
「愛夏は家で接触できる。放課後は、別の人物を探すことにする」
「じゃあ、誰から?」
「ゴワスだ。ああ、本名は斎藤隆盛な」
俺はメモを指さす。
最初は反発し合っていたが、それがきっかけで俺たちはかけがえのない友達になることができた。
プロゲーマーを目指す夢を応援した。
俺にとっては、共に夢へ走り続ける大切な仲間だった。
「一周目では、どういう関係だったんですか?」
「俺自身は面識ないけど、世話になった上司の弟だ」
一周目の未来で、俺にとって最高の上司だった斎藤梨利子ことリリさんの弟。それがゴワスだった。
「あと、幼馴染のキクりんの中学時代の同級生でもある」
「でも、それって二周目で知った情報なんですよね?」
「中学時代の話なら、ポニテ馴染の影響を受けていないはずだ」
高校からの人間関係は、二周目で大きく変わっている。
でも、中学時代はそのままのはずだ。
「問題はゴワスがどの高校に行ったかをキクりんが知っているかどうかなんだけどな」
「そのキクりんさんはどういう人なんですか」
「身長190cm超えでゲームのうまい超人だ」
小学校の頃、キクりんとはよく遊んだ。
それから中学で別々になって、疎遠になった。
二周目では再会したが、一周目で再会することはなかった。
「キクりんは大島に住んでる。家を訪ねれば、ゴワスのことも聞けるはずだ」
「わかりました! じゃあ、行きましょう!」
伊代が元気よく頷いた。
その明るさに、少しだけ救われた。