疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

360 / 408
第360話 一周目では小学校卒業以来

 大島に向かう途中。

 ふと、気になったことを伊代へと尋ねる。

 

「そういえば、伊代はどの辺りに住んでるんだ?」

「芝公園駅が最寄りです」

「港区女子かよ」

 

 そういえば、アミも港区に住んでるんだっけか。

 

「なんですか、それ?」

「……そうか。まだ港区女子って単語は流行ってなかったか」

 

 というか、港区女子は港区に住んでいないだろうから、使い方は全然違うんだけども。

 

「私、実家がお寺なんです」

「芝公園付近の寺って、あの有名な?」

「いえ、増上寺じゃないですよ。もっとこじんまりとしたお寺です」

 

 港区の寺といえば増上寺というイメージがあったが、他にも寺はあるようだ。

 

「田中先輩。その菊池さんは幼馴染で家が近所だったんですよね?」 

「ああ、そうだな」

「いつでも会いに行けるのに、どうして疎遠になっちゃったんですか?」

 

 もっともな疑問ではある。

 

「いつでも会いに行けるからだろ。ほら、学校から家が近い奴ほど遅刻するのと一緒だ」

「あー……なんかわかる気がします」

「学校生活で一緒じゃないと、放課後に時間使ってわざわざ連絡取らないといけないだろ? 手間のかかる友情より、手頃な友情を優先するのが人間だ」

「えっ、でも先輩友達いないんですよね?」

「おっと、それ以上は喧嘩だぞ」

 

 そんな会話をしながらキクりんの家へと向かう。

 小学校のときは何度も訪ねた家だ。

 二階建ての一軒家。

 玄関の前に、自転車が置いてある。

 まさか二周目でも行くことのなかったキクりんの家に来ることになるとは……。

 

「ここですか?」

 

 伊代が、家を見上げる。

 

「ああ」

 

 俺は深呼吸をしてからインターホンを押す。

 チャイムの音が家の中に響く。

 しばらくして、インターホンでの確認もなくドアが開いた。

 

「どちらさま、で……」

 

 出てきたのは、見覚えのある顔だった。

 

「久しぶりだな、キクりん」

「カナタ?」

 

 キクりんが、わずかに目を見開いてこちらを見た。

 

「小学校卒業以来か?」

「そうだな。急にごめんな」

「気にするな。俺たちの仲だろ……ん?」

 

 後ろにいた伊代に気づいたキクりんが目を細める。

 

「なんだ、彼女の紹介か?」

「ち、ちち、違います! 私はただの後輩です!」

 

 伊代は顔を真っ赤にしてバタバタと手を振り始める。

 こうしてみると、本当にあの上位存在とは別人なんだなぁ。彼女が二周目で依り代みたいな状態になっているのは、寺の子供ということも関係しているのだろうか。

 

「伊代は漫研の後輩だ。一緒に来たのは、ちょっと聞きたいことがあったからなんだ」

「聞きたいこと?」

 

 キクりんが、僅かに眉を動かす。

 さて、どう言ったものか。

 バカ正直に二周目のことを話すわけにもいかない。

 

 ええい、ここは直球で聞くしかない。

 

「キクりん。斎藤隆盛って、知ってるか?」

「あー、隆盛か。知ってるよ。同じ中学だった」

 

 その答えに安堵する。

 やっぱり、中学以前の情報はきちんと繋がっていた。

 

「そいつのこと、教えてほしいんだ」

「どうしてまた?」

「ちょっと、事情があってさ」

 

 曖昧に答える。

 詳しく説明しても、信じてもらえないだろう。

 キクりんは、しばらく俺を見ていた。

 何かを考えているような目だった。

 やがて、小さく頷く。

 

「わかった。上がれ」

 

 キクりんが、ドアを開けて中に招き入れる。

 

「お邪魔します」

 

 俺と伊代は、靴を脱いで家に上がった。

 玄関から続く廊下。

 リビングに案内される。

 テーブルには、教科書とノートが広げてあった。

 

「勉強してた。邪魔したか」

「いや、別に」

 

 キクりんが、椅子を引いて座るように促す。

 俺と伊代は、テーブルを挟んで座る。

 

「で、隆盛のことが知りたいんだったな」

「ああ。ちょっと会って話がしたいと思ってさ」

 

 キクりんが、少しだけ考える仕草を見せる。

 

「俺と同じ高校に通ってるぞ」

「同じ高校だったのか」

 

 それなら、話が早い。

 キクりん経由で接触ができる。

 

「仲良いのか?」

「良くはないな。バスケ部で一緒なんだが、どうにも中学のときから敵視されててな」

 

 キクりんが、僅かに視線を逸らす。

 

「だから、聞くだけ聞いてみるけど、期待はするなよ?」

「気にするな。繋げてくれるだけでもありたがい」

「それなら、いいんだが」

 

 それから、俺たちは連絡先を交換してキクりんの家を出る。

 

「カナタ。久しぶりに会えて、悪くなかった」

 

 その言葉が、キクりんらしいと思った。

 大袈裟に喜ぶわけでもなく、冷たくあしらうわけでもなく。

 それが、キクりんだった。

 

「また、遊びに来る」

「ああ。いつでも来い……じゃあ、またな」

「ああ。またな」

「お、お邪魔しましたー……」

 

 俺たちに向かってキクりんが手を振る。

 これで第一の手がかりが掴めた。

 

 あとは、当たって砕けろだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。