疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第361話 絡まれている人間を助けがちな男

 数日後。キクりんから連絡が来た。

 

[悪い。まともに会話できなかった]

 

 スマホの画面に、そのメッセージが表示されている。

 予想はしていた。二周目で聞いた情報からすれば、キクりんとゴワスは仲が悪い。

 無理に頼んでも、逆効果になる可能性は高かった。

 

[ただ情報なら教えられる]

 

 次のメッセージが届く。

 

[隆盛はよく亀戸のゲーセンにいる。最近は部活サボリがちでな]

 

 まさかの近所だった。

 ゴワスが自慢に思える部分の大半は、能力的にキクりんが上回っている。

 それがあいつのコンプレックスだった。

 だから、あんなに一生懸命だったバスケに打ち込むのが嫌になってしまったのだろう。

 

[ありがとな。助かる]

 

 返信を送ると、すぐに既読がついた。

 

[気をつけろ。隆盛は、気が短いぞ]

 

 わかっている。

 二周目のゴワスも、最初は反発してきた。

 だからこそ、仲良くなれたんだ。

 それから俺と伊代は亀戸へ向かった。

 

「先輩。ゲームセンター、この辺にあるんですよね?」

 

 伊代はスマホの地図を見ながらキョロキョロと歩いている。

 

「ああ、駅近だからすぐのはずだ」

 

 俺も記憶を辿る。

 少し歩くと、ゲームセンターの看板が見えた。

 

「ここですね」

「ああ」

 

 俺たちは揃って中に入った。

 店内に入ると、音楽と効果音が耳を揺さぶる。

 一階にはクレーンゲームの類。ここにはいないだろう。

 

「ゴワスがいそうなのは上の階だな」

 

 上の階へ行くと格ゲーなどのアーケードゲームが並んでいる。

 その中でも目立つのは、奥にあるボットゲームの筐体だ。

 

「あれとかどうですか?」

 

 伊代が奥を指さす。

 

「まあ、ゴワスの遊んでそうなゲームではあるか」

 

 俺が奥へ向かって歩き出すと、伊代が後ろからついてくる。

 筐体の周りを見渡すが、ゴワスの姿はない。

 

「いませんね」

「まだ来てないのか」

 

 俺はスマホで時間を確認する。

 まだ四時を少し過ぎたところだ。

 部活をサボってきているなら、もう来ていてもおかしくない時間だ。

 キクりんの話じゃ、高校もこの辺らしいし。

 

「どうしますか?」

「待つしかないな」

 

 俺は近くのベンチに座ると、伊代も隣に座った。

 しばらく待ってみるが、ゴワスが現れる気配はない。

 

「先輩、ちょっとお手洗い行ってきます」

「おう、いてらー」

 

 伊代が立ち上がって、トイレへ向かう。

 俺は一人でベンチに座ったまま待つ。

 

「おい、あんた」

 

 突然、声をかけられた。

 顔を上げると、そこには三人の男が立っていた。

 高校生くらいだろうか。

 いや、もう少し上かもしれない。

 派手な服装。金髪に染めた髪。タバコを吸っている奴までいる。

 しまった。ここは亀戸だ。この時代のゲーセンの治安がいいわけがなかった。

 

「何か用ですか」

 

 俺は警戒しながら答える。

 

「ちょっと話があんだけど」

 

 タバコを吸っている真ん中の男が、ニヤニヤと笑う。

 

「すみません、用事があるので」

 

 俺がその場を立ち去ろうとすると、男たちが道を塞ぐ。

 

「そう冷たくすんなよ」

「困るんで、どいてもらえますか」

「態度でけーな。高校生のくせによ」

 

 男の一人が、肩を掴んでくる。

 まずい。これは厄介なことになる。というか、なってる。

 

「先輩!」

 

 伊代がトイレから戻ってきた。

 この状況を理解したのか、顔が青ざめている。

 

「おっ、彼女か? 可愛いじゃん」

 

 男たちが伊代に視線を向ける。

 

「関係ないだろ。俺たちはもう帰るから」

「待てよ。まだ話は終わってねーぞ」

 

 男たちが、俺と伊代を囲む。

 逃げ場がない。

 店員がいないか周りを見渡すが、誰もいない。

 他の客もこちらを見ているが、関わりたくないという顔をしている。

 

 どうする。警察を呼ぶか。

 それまで時間が稼げるか。

 

「よぉ、あんたら大丈夫か?」

 

 声が聞こえた。

 振り返ると、見覚えのある人物が立っていた。

 黒い髪に、がっしりとした体格。そして、鋭い目つき。

 見間違うはずもない。ゴワスだった。

 

「あん? 誰だお前」

 

 男たちがゴワスを睨むが、ゴワスは一切怯まずに三人を睨み返す。

 高身長でガタイのいい奴に睨まれたか、男たちは怯む。

 

「だっせぇな。三人で高校生囲んでよ」

「関係ねーだろ。失せろ」

「関係ねーけど、気に食わねぇんだ」

 

 ゴワスが一歩前に出る首を鳴らす。

 バスケで鍛えた身体が、威圧感を放っている。

 

「あぁ?」

 

 男の一人が、ゴワスに詰め寄る。

 

「やんのか?」

「やってもいいけど」

 

 ゴワスが、肩をすくめる。

 

「お前ら、タッパの差でどれだけ力に差が出るか知ってるか?」

 

 その言葉に、男たちの動きが止まる。

 

「チッ」

 

 真ん中の男が、舌打ちをする。

 

「覚えてろよ」

 

 男たちが、俺と伊代から離れる。

 そして、ゴワスを睨みながら去っていく。

 その背中を見送って、俺は大きく息を吐いた。

 

「助かった」

 

 心臓が早鐘を打っている。

 ゴワスが、こちらを向く。

 

「大丈夫か?」

「あ、ああ」

 

 俺が頷くと、伊代が深く頭を下げる。

 

「本当に、ありがとうございました」

「別に」

 

 ゴワスが手を振る。

 

「むしゃくしゃしてたから喧嘩の理由が欲しかっただけだ。結局、ただの腰抜けどもだったわけだが」

「それでも俺たちが助けられたことには変わりない。礼がしたいんだ。何か、奢らせてくれないか?」

「別にいいって」

「いや、ダメだ」

 

 勢いよく首を振る。

 

「助けてもらったのに、何もしないわけにはいかない」

 

 ゴワスが、少しだけ困った顔をする。

 

「まあ、そこまで言うなら」

「ありがとう」

 

 これで話すきっかけができた。

 

「近くに、飲食店あったっけか」

「駅近のサイネでいいぞ」

「私、香味チキン食べたいです!」

「なんで伊代のほうがノリノリなんだよ」

 

 こうして、ゴワスとの出会いは二周目と比べてまだマシな出会いになるのであった。

 

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