疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
ラーメンを食べ終えて、俺たちは店を出た。
会計を済ませて暖簾をくぐると、外はもう暗くなっていた。
街灯が点いて、オレンジ色の光が道を照らしている。
「ありがとう、カナタ。奢ってくれて」
「気にするな。久しぶりだし」
ヨシノリが笑う。その笑顔が街灯の光に照らされて、少しだけ幻想的に見える。
「住んでるとこは変わってないよな」
「うん。あのエレベーターアクションした団地」
「ああ、よくやったよな」
ゆっくりと並んで歩き出す。
ヨシノリの身長が高いこともあり、歩幅を合わせる必要はない。なんなら、俺が合わせてもらいたいレベルだ。
「そういえば、公園寄ってかない?」
ヨシノリが言う。
「公園?」
「駄菓子屋ひより前の公園。昔、よく遊んだじゃん」
「そうだな。キクりん、シューヤに平井。みんなよく集まってた」
「うっわ懐かし!」
「ちなみに、キクりんとは最近あったぞ」
「マジ!? 元気してた」
「元気だったし、とうとう身長190cm越えしたぞ」
「デカ過ぎんでしょ……」
住宅街を抜けて、公園に向かって歩く。
「ここに来るのも久しぶりねぇ」
「いつも通ってるだろ。通学路的に」
「あたしは亀戸方面に歩いてるからこっちは通んないの」
ヨシノリがブランコに腰かける。
チェーンが軽く音を立て、座面が揺れる。
「ねぇ、カナタ。最近どう? 学校とか」
「まあまあだな。友達も増えたし」
「へぇ、良かったじゃん」
ヨシノリが嬉しそうに笑う。
「カナタ、昔から一人でいること多かったもんね」
「うるせ……そういう、ヨシノリはどうなんだ?」
「楽しいよ。部活も充実してるし」
明るい声でヨシノリは続ける。
「あたし、桜華学院高校に通ってるんだ」
「あー、だから亀戸の方なのか」
「そそ。運動部が強い学校だから、バスケ頑張りたくてさ」
ヨシノリが、ブランコを少し大きく揺らす。
「もう卒業しちゃったけど、一年のときの部長が群を抜いてうまかったんだ」
「へぇ、どんな人だったんだ?」
「真宮寺凛桜先輩。あたしと同じくらいの身長で、ポニーテールが似合う先輩だった」
ヨシノリが、懐かしそうに笑う。
「面白い人でさ。母親の苗字が越後で、よく自虐で〝えちゴリラ〟って言ってたの」
「ぶふっ」
なんだそのあだ名は。ほぼいじめだろ。
「そう。自分で言ってたんだよ? 面白い人だったなぁ」
ヨシノリが、楽しそうに話す。
「ちなみに、お姉さんは越後睦月って――いや、うん、なんでもない」
突然、ヨシノリが口を閉じて気まずそうに視線を逸らす。
越後睦月。えちごむつき……えっちゴム付。
ド下ネタだった。
ヨシノリの横顔が赤くなっている気がする。
まあ、普段から女子の集団にいたらそういうノリになるのもしょうがないか。
気まずい空気が流れたため、その空気を振り払うように話題を変える。
「あー、そうだ。俺は慶明高校に通ってる」
「あー! 慶明行くってママが言ってたわ、そういえば」
「なんで紀香さんのほうが俺の情報に詳しいんだよ」
「あの二人、仲良いからなぁ」
一周目でも、変わらず俺の母さんと紀香さんは仲良しである。
まあ、二周目では俺とヨシノリが仲良くなってるから家族ぐるみの付き合いも増えたんだろうけど。
「部活は?」
「文芸部と漫研に入ってる」
「カナタらしいね」
さっきの気まずさが消えて、またヨシノリに明るさが戻る。
「小説、書いてるの?」
「書いてるよ。ずっと、これまでも、これからもな」
「そっか。カナタ、昔から好きだったもんね」
ヨシノリが、ブランコを軽く揺らす。その動きに合わせて、俺もブランコを揺らす。
二つのブランコが、同じリズムで揺れる。
「一緒に通えてたら、楽しかったんだろうな」
その言葉が、自然と口から零れ落ちた。
本音だった。二周目では一緒に通っていた。
朝会って、一緒に登校して、一緒に帰った。当たり前のように傍にいた。
この世界では違う。
別々の学校に通って、別々の日々を過ごしている。
ヨシノリが、ブランコを止めてこちらを見る。
「カナタもそう思ってたんだ」
ヨシノリは照れくさそうに笑った。
「なんか、嬉しいな」
その笑顔を見て、胸が温かくなる。
風が吹いて、ヨシノリの髪が揺れる。
残ったトレードマークであるポニーテールが街灯の光に照らされ、輝いて見えた。