疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第371話 名残惜しいが……

 ヨシノリとは、公園で連絡先を交換してから別れた。

 スマホの画面に〝佐藤由紀〟の名前が表示されている。

 二周目では毎日のように見ていた名前であり、この世界では久しぶりに見る名前だった。

 

「じゃあ、またね」

「おう、またな」

 

 ヨシノリが手を振る。俺も手を振り返す。

 その背中を見送りながら、胸の奥に名残惜しさが広がる。

 もっと話していたい。もっと一緒にいたい。

 

 二周目のように、毎日会いたい。

 

 それでも、これ以上の接触は危険だと判断した。

 未来への影響を考えたら、ここで踏みとどまるべきだ。

 ヨシノリとの関係が深まれば深まるほど、一周目の未来が変わっていく。

 それが二周目の世界にどう影響するか、わからない。

 俺は踵を返して、家へ向かって歩き出した。

 

 街灯の光が道を照らしている。冷たい風が頬を撫でる。

 ポケットに手を突っ込んで、俯きながら歩く。

 家の前には、ジャージ姿のままの愛夏がいた。

 タイミングよく部活が終わって帰ってきたらしい。

 

「あっ、お兄ちゃん。おかえり」

「ただいま。随分熱心に練習してたんだな」

「ま、そろそろ三年生は引退だからね。最後まで頑張っておきたくて」

「青春だねぇ」

 

 愛夏が鍵を取り出してドアを開ける。

 

「「ただいまー」」

 

 帰宅と同時に声をかけるが、返事はない。

 一周目でも両親は仕事のため、基本家にいない。

 

「お兄ちゃん」

「ん?」

「さっきの女の子、もしかして由紀ちゃん?」

 

 その問いに、リビングへ向かう足が止まる。

 

「見てたのか」

「たまたま。帰り道で見かけただけ」

 

 愛夏が肩にかけたバッグを持ち直す。

 

「まるちゃまで再会したんだ。偶然な」

「へぇ……?」

 

 愛夏の声が、少しだけ興味を示している。

 普段の無関心な態度とは違う。

 

「久しぶりに会えて嬉しかったんじゃない」

「まあな。連絡先も交換したし、また今度会ってみるかな」

 

 とは、言ったがその頃には俺は二周目に戻っているだろう。

 

「そうだ愛夏。これ」

 

 俺は鞄から包みを取り出す。まるちゃまのロゴが入った袋。

 中には温かいものが入っている。

 

「部活終わりで腹減ったろ。照りタマ丼。まるちゃまでテイクアウトしてきた」

 

 包みを差し出すと、愛夏の目が少しだけ見開かれる。

 

「えっ、マジで?」

「部活で疲れて飯作るのだるいだろ?」

「わかってんじゃーん」

 

 愛夏が嬉しそうに笑う。目元が緩んで、口角が上がっている。

 久しぶりに見る明るい表情だった。

 

「ありがと、お兄ちゃん」

「どういたしまして」

 

 愛夏が包みを受け取って、リビングへ向かう。

 その背中が弾んでいる気がする。歩き方が軽い。

 愛夏との関係が改善されていることに満足しつつ、自分の部屋へ向かう。

 

 机の前に座って、パソコンを立ち上げる。

 ファンが回り始める音が静かな部屋に響き、画面には途中まで書いたポニテ馴染のリメイク版が表示される。

 今日のことを書き加えて方向性を修正せねば。

 

 ヨシノリとの再会。

 公園での会話。

 別れ際の名残惜しさ。

 

 全部、物語に織り込む。

 俺はキーボードに指を置く。

 時間が過ぎていくのを忘れて、俺は加筆に没頭した。

 

 手は止まらない。キーボードを叩く音だけが、静かな部屋に響き続けた。

 

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