疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
コミケから帰ったあと、爆睡していたら変な時間に起きてしまった。
時計を見ると、午前三時を回っている。まだ外は暗い。身体は重いが、目は冴えていた。
リビングに降りてみると明かりが点いていた。
「こんな時間に起きてるなんて珍しいな」
「ちょっと眠れなくてさ」
パジャマ姿の愛夏がココアを飲んでいた。
このクソ熱い夜によくそんなの飲めるな。テーブルの上には湯気が立っている。エアコンが効いているとはいえ、見ているだけで暑苦しい。
「最近賑やかになったなって思ってさ」
「まあ、俺が友達増えて家に連れてくるようになったからな」
「由紀ちゃんは連れてこないの?」
「さすがに、好きな子を家に連れ込むのはハードル高い」
「おっ、やっと自覚したんだ! 執筆マシーンにもようやくアプデが入ったかー」
愛夏が嬉しそうに笑う。俺は冷蔵庫を開けて、麦茶を取り出す。グラスに注いで、愛夏の向かいに座った。
「前からわかってたよ」
「えー、ホントに?」
愛夏がココアのカップを両手で包みながら、じっとこちらを見る。
説明するのは難しい。二周目の話なんてできるわけがない。
「色々あったんだよ」
「ふーん。まあいいけど」
愛夏は追及してこなかった。麦茶を一口飲む。
冷たい液体が喉を通って、身体の芯まで染みていく。
「でも、変わったよね。お兄ちゃん」
「そうか?」
「そうだよ。前は部屋にこもって小説ばっかり書いてたのに、今は外に出て人と遊んでるし。なんか、普通の高校生っぽくなった」
「普通の高校生じゃなかったみたいな言い方だな」
「だって普通じゃなかったでしょ。一日中パソコンの前に座って、ご飯の時だけ降りてくるニートみたいな生活してたんだから」
一周目の俺は、人と関わることを鬱陶しく思っていたところがあるからな。
ヨシノリと疎遠になって、愛夏以外と会話することもほとんどなかった。
「今のほうが楽しそうだよ」
「楽しいよ」
素直に答えた。愛夏が少し驚いたような顔をする。
「へぇ。お兄ちゃんがそんなこと言うんだ」
「言うだろ、普通に」
「言わないよ。前のお兄ちゃんなら絶対に言わない」
愛夏がココアを飲んで、カップを置く。テーブルに小さな音が響いた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ」
「小説、書き続けるの?」
「書く。一生な」
即答した。愛夏が目を細める。
「じゃあ、友達と遊ぶのと小説は、どっちが大切?」
「両方だ。差をつけるようなもんじゃない」
愛夏が笑った。満足そうな、安心したような笑顔だった。
「やっぱりそう言うと思った」
「何が?」
「お兄ちゃん、前は小説しかなかったけど、今は小説と友達の両方があるじゃん。それって良いことだなって」
愛夏が笑う。俺も釣られて笑った。
リビングに、静かな空気が流れる。時計の秒針だけが、規則正しく音を刻んでいた。
愛夏がココアを飲み干して、立ち上がる。カップをシンクに置いて、振り返った。
「お兄ちゃんも、そろそろ寝たほうがいいよ。コミケで疲れてるでしょ」
「そうだな」
俺も麦茶を飲み干して、立ち上がる。愛夏が先に階段を上がっていく。その背中を見ながら、俺も後を追った。