疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第381話 帰りたい。でも、帰れない

 ゴワスとナイトに誘われてゲームセンターに来ていた。

 格闘ゲームの筐体が並ぶフロア。音楽と歓声が混ざり合って、耳に響く。

 ナイトがコインを投入して、キャラクターを選ぶ。

 

「奏太、今日調子悪いな」

 

 ゴワスが隣で笑う。

 

「五連敗だぞ。お前にしては珍しい」

「……そうかもな」

 

 画面を見る。操作はしている。コマンドも入力している。

 意識が追いついていない。指が動いているだけで、頭が働いていなかった。

 今度はナイトのキャラクターが俺のキャラクターを叩き潰す。

 KOの文字が画面に浮かぶ。また負けた。

 

「僕の勝ち。じゃあジュース奢りだね」

「マジか」

「約束でしょ。三連敗したら奢るって」

「六連敗だから二本だな」

 

 ナイトが笑う。ゴワスも肩を叩いてくる。

 自販機まで歩いて、コインを入れる。

 缶が落ちる音が響いて二本取り出す。ナイトとゴワスに渡す。

 

「サンキュー」

「いただきます」

 

 二人が缶を開ける音が聞こえる。俺も自分の分を買って、プルタブを起こす。炭酸が喉を通って、少しだけ頭がすっきりした。

 

「奏太、なんかあったのか」

 

 ゴワスが真顔で聞いてくる。

 

「……わかるか」

「わかるよ。お前、今日ずっとボーッとしてただろ」

「何かあったんじゃないのかい?」

「ちょっとな」

「言いたくないなら無理に聞かないけど」

「悪い」

 

 ゴワスが缶を飲み干して、ゴミ箱に捨てる。

 ナイトも飲み終えて、同じようにゴミ箱へ向かう。

 

「じゃ、今日はこの辺で解散しようか」

「おう」

「また誘うわ」

 

 二人が手を上げて、ゲームセンターを出ていく。俺も後を追って外に出た。

 空が赤く染まっている。夕暮れの光が、ビルの壁に反射して眩しい。

 ゴワスとナイトが別の方向へ歩いていく。

 

 俺は一人、その場に立ち止まった。

 空を見上げると、雲がゆっくりと流れていた。

 風が吹いて、髪が揺れた。

 

 本当ならすぐにでも二周目の世界に帰りたかった。

 ポニテ馴染は書き上がった。続編の執筆者も愛夏でほぼ確定している。

 愛夏が俺の小説の続きを書いたとしたら、それは俺が死んだことも原因のうちだ。

 過去を改変して二周目のような交友関係を作れば、俺のバカを止められる確率が増え、愛夏が執筆をしなくて済む未来に変えられる。

 だから、兄妹関係も修復して不安の芽は取り除いたはずだった。

 

 あとは二周目に戻るだけ。

 でも、万が一にでも自分が戻ることによって伊代の存在そのものが消えてしまう可能性があるのなら、容易に実行はできなかった。

 伊代が言っていた言葉が、頭の中で繰り返される。

 

『私、たぶん、現実世界の住人じゃないかもしれません』

 

 あの言葉の意味を、どう受け止めればいいのか。

 俺が名付けた神野塚伊代。二周目で生まれた存在。

 それが一周目に写り込んで、この世界に実体を持っている。

 

 もしそうなら、俺が二周目に戻ったとき、伊代はどうなる。

 消えるのか。記憶が消えるだけなのか。

 それとも、何も起きないのか。

 わからない。確証がない。

 

 だから、動けない。

 

 駅に向かって歩き出す。人の流れに混じって、改札を抜ける。

 電車に乗って窓の外を眺めると、そこには二周目となんら変わらない景色があった。

 

 帰りたい。でも、帰れない。

 

 その矛盾が、胸の奥で重くなっていた。

 

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