疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第392話 修学旅行の始まり

 二周目で俺を補完していた存在は修学旅行自体の準備はしてくれていたため、当日の朝に慌てることにならなかったのは幸いだった。

 原稿作業や担当編集との打ち合わせもつつがなく進めてくれていたようで、三ヶ月以上記憶が抜けた状態でも支障が出ないようになっていて助かった。

 完全に他人の功績で助かっているが、その他人は他でもない俺の代替存在だ。

 礼を言う相手でもないし、むしろ俺が感謝されるべきなのか。

 よくわからなくなってきたので考えるのをやめた。

 

「それにしても、鹿児島か……」

 

 慶明高校の修学旅行先は九州の選択式で、長崎コースと鹿児島コースに分かれる。

 一周目では長崎を選んで余り物同士で班を組まされ、班行動で解散してボッチでちゃんぽんを食べるという、何とも言えない時間を過ごした記憶がある。

 二周目の俺が鹿児島を選んでいたのは、ある意味正解だった。

 電車に揺られながら、俺はスマホを開いた。RINEの通知を確認する。

 溜まったメッセージを上から順にさかのぼっていくと、三ヶ月分の記録が並んでいた。

 最初は普通だった。ヨシノリからのメッセージに対して、こちらも普通に返している。

 

 それが一ヶ月を過ぎた頃から、様子が変わる。

 ヨシノリ側のメッセージは変わらない。

 他愛のない話題で話しかけてくる。

 部活の話。ご飯の話。たまに面白い動画のリンク。

 

 問題はこちら側だ。

 既読がついて、返信がない。あるいは一言だけ。

 

  そっか。了解。おつ。スタンプ一枚で流していることもある。

 

 ヨシノリのメッセージとこちらの返信を交互に読んでいると、じわじわと胸の奥が痛くなってくる。

 原稿が立て込んでいた時期と重なっているのはわかる。

 締め切り前は連絡が雑になるのは仕方のないことだ。

 ただ、問題はそこじゃない。

 

 原稿が落ち着いた時期にも、返信は変わっていない。

 むしろ、ヨシノリのメッセージ自体が徐々に減っていく。

 

 最初は毎日届いていたのが、三日に一回になり、一週間に一回になり、ここ数日はほとんど途絶えている。

 

 理由は明白だった。

 二周目の俺は、俺じゃなかった。

 恋愛感情を持たない、ラブコメ主人公としての機能だけを果たす存在が、俺の代わりに三ヶ月間そこにいた。

 ヨシノリに話しかけられても、義務的な返事しか返さない。感情の温度がない。一緒に笑おうとしない。

 ヨシノリはそれに気づいていたのかもしれない。何かがおかしいと感じながら、それでも話しかけ続けて、ある時点で諦めた。

 

 あるいは、傷ついた。どちらにしても、俺のせいだ。

 俺が二周目から弾き出されて、抜け殻みたいな存在を残してしまったせいだ。

 

「だから、今朝も来なかったのか……」

 

 電車が速度を落とし始める。次の駅のアナウンスが流れる。

 ヨシノリとの三ヶ月分の空白を、どうやって埋めればいい。

 

 答えは出ないまま、電車は進んでいく。

 

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