疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
連れてこられたのは、搭乗ゲートからやや離れたベンチのあたりだった。
アミと喜屋武は俺を挟む形で左右に座る。正面に立つ壁と合わさって、完全に逃げ場がない。
「カナタ君」
「何だよ、急に……」
「由紀ちゃんのこと、好きなんですよね」
単刀直入だった。アミの声は穏やかだったが、目は笑っていない。
「……まあ、そうだな」
「それで、あの状態ですか」
ただ、事実を並べるような静けさが余計に刺さった。
俺がヨシノリを好きだからアミの告白を断った。そのことはアミも喜屋武も知っている。それなのに現状があれでは、確かに怒るのも無理はない。
「ヨッシーはずっと、元気なフリしてたさー」
喜屋武が静かに言う。
「カナタンがまた執筆マシーンになってから……無理してたのわかったさー」
「わかってるよ」
「わかってるなら何でかね?」
責めるでもなく、悲しそうに喜屋武は続ける。
告白こそしていないが、おそらく一周目の経験から喜屋武も俺に……少なからず好意を抱いている、のかもしれない。だからこそ、この怒りは本物だ。
「本当に好きな人がいるから振りましたって言われて、その人のことを蔑ろにするって、どういうことかわかりますか」
アミの言葉が静かに落ちてくる。
「だから、わかってるって」
「わかってるって言葉、さっきから何回言いましたか」
返す言葉がなかった。
……それにしても、ここまで怒るか。いや、怒るのは当然だが、二人の怒りの温度が想定より高い気がする。
二人とも自分の想いを諦めたのに、当の俺が本命に対して好意があるとは思えないムーブをかましているから怒っている。
ただ、それだけじゃない何かがある気がした。
俺はぼんやりと考えた。
空白の三ヶ月間。補完存在がいた期間。
それは俺の代わりにこのメンバーの中で生活していた。
ヨシノリに対してはろくに連絡も返さず、既読無視を繰り返した。それは知っている。
でも、漫研はどうだった。
伊代との一周目での関係性が二周目にも反映されるように調整した。
ということは、補完存在がいた三ヶ月間も、漫研には普通に顔を出していたはずだ。
伊代とも、それなりに話していたはずだ。
ヨシノリとはギクシャクしたまま。なのに、漫研の後輩女子とは普通に仲良くしている。
外から見れば、そういう絵面になる。
「あの、一個確認していいか」
「何ですか」
「俺がヨシノリを無視してた期間、漫研には普通に行ってたか」
アミと喜屋武が顔を見合わせる。
「行ってましたよ。毎日ではないですけど、普通に」
「伊代とも話してたか」
「仲良さそうにしてましたよ。普通に」
背中から滝のように冷や汗が出た。
ヨシノリをほぼ無視しておいて、漫研の後輩とは普通に話している。
しかも、相手は同じ女子だ。外側から見ればどう映るか、考えるまでもない。
俺は額に手を当てて天を仰いだ。
「……そういうことか」
「そういうことですよ」
アミの声は穏やかなままだった。それが逆に怖かった。
「由紀ちゃん、カナタ君に何も言いませんでしたよね。言えないから」
「……ヨシノリはこういうとき、自分の気持ち言わないからな」
「だから、私たちが言います」
喜屋武がこくりと頷いた。
「ヨッシーに、ちゃんと向き合ってほしいさー」
「これ以上、人の気持ちを踏み躙る執筆マシーンにならないことを祈っています」
「……肝に銘じます、はい」
どうやら、俺が一周目に行っている間に、人間としての信頼はガタ落ちしていたらしい。